絶望的な希望


中学最後の冬のある日、俺は彼女である名前から彼女が原因不明の病に侵されていることを知った。

「なんだよそれ…まじかよ…」
「…うん、ほんと」
「嘘だろ?」
「…ううん、ほんと」
「治るんだよな…?」
「…ごめんね」
「なんで謝るんだよ…!治るんだろ…!?」

思わず、名前の腕を掴んだ。力いっぱい。ちょっと痛かったと思う。

「あのね、よくきいて」
「…………」

ゆっくり静かに頷く。

「方法はあるんだよ」
「っ、じゃあ…!」
「原因不明って言われたけど、手術をすれば治るかもしれないんだって」
「…かも、って…」
「…うん、でね」

名前はそこで一息おいて、肺に酸素を溜め込むように息を吸って。

「れいてん…」

吐き出した。

「れいれいれいれいれいれいれいれいろく、パーセント」

もしかして、と思った。
だが、そんなもの信じられない。信じたら、いけない。
名前が口を開いた。
駄目だ、その先は。

「手術が成功する確率だよ」



(わたし、死ぬの)
(やめてくれ、言わないでくれ)
(さようなら)
(さよならなんて、したくないんだ)



101202