ささやかな幸せ 「いっ…!」 屋上で学ランを枕にして寝ていたら、急に枕がなくなって、後頭部を地面のコンクリにぶつけた。ほんま痛い。 頭を抱えて地面に寝そべったままうずくまっていると、視界が少し暗くなって、そこで初めて俺以外に誰かがいることに気が付いた。 「もう三時間目やで」 目の前には、立ちはだかるいちごパンツ…ではなく、毛糸のくまパン。 「…パンツ見えとるで」 女子としてはしたないので注意してやると、ぶん殴られた。 なんつー男前なやっちゃ。 「何時間目までおる気やねん」 言いつつ、俺の隣に座る苗字。 カーディガンの袖のばして、指先しか見えていない手で膝を抱え込んでいる。 「三時間目」 とそこで、三校時が始まるチャイムが鳴り響いた。 「あ、ユウジのせいで授業間に合わんかったやん」 「俺のせいにすんな」 「責任とれ」 苗字は俺の近くに寄ってきて、こてん、と頭を俺の肩に預けた。 「寝る」 言った途端寝息がきこえてきて、早過ぎやろ、と内心思いつつ、俺も苗字の方に頭を傾けた。背中はコンクリの壁。 こんな日々がずっと続いてくれたらいいのにと心から思ったら、涙が出そうになった。 101201 |