変態先輩、其ノ壱


俺ら男子テニス部にはマネージャーが二人いる。一人は男子、もう一人は女子。どちらも三年生。そして、男子はともかく、女子の方は美人だ。
リアルに伝えようとすると長くなるので端的に言うと、十人に八人が振り向くくらい。残りの二人は趣味が変わっている人達だ。

「財前くん」

今その先輩に声をかけられている。端から見れば羨ましい限りだろう。
しかし、この先輩−−

「今日もかっこいいねえ。ちゅーしよう、ちゅー」

変態なのだ。



「いったいよ!財前くん!」
「知らんわ」
「いやいや、財前くんが叩いたんだからね?」

キス魔宣言されて思わず苗字先輩の頭を叩いてしまった。
まあ、別に後悔はしていない。
というか全くない。
むしろ爽快感を感じた。

「ほんまに苗字先輩って気持ち悪いんすね」
「ほんとに財前くんは言葉をオブラートで包まないよね」

オブラート知ってる、などと聞いてくる先輩を横目に、オブラートくらい知っとるわ、と心の中でつっこむ。

「ていうかね、私そんなに気持ち悪くないよ。財前くんのリストバンドになれれば満足だよ」
「充分変態やんけ」



(…てんぱい)
(何それ私を悶え殺す気?)
(先輩ほんまキモいっすわ)



101120