自愛心の塊


私が朝、学校に登校し教室に入ると、わいわいがやがやと賑やかだった。他の学校もそうだろうが、四天宝寺中はもっと元気がいいと自負している。

「おはようさん」
「あっ、おはよう」

後ろから声をかけられ振り向くと、隣の席の白石が立っていた。濡れた髪を見たところ、おそらく朝練だったのだろう。さすがテニス部部長やな、と感心する。

「朝練やったんやろ、お疲れ様」

二人で、席へ移動しながら話す。

「おん、ありがとう。朝練、疲れんねんけど、楽しいからな」

疲れを微塵も感じさせない笑顔で頷く白石。
頼りがいがあり、フェミニストで、容姿端麗で、非の打ち所がない…と、思いきや、ひとつだけ鼻につく所がある。少なくても私にはめちゃくちゃつく。つきまくる。その、ひとつとは…

「俺って、汗かいとってもかっこええなあ…」

これだ。
自分用の手鏡を持ち歩き、事あるごとに覗き込み、うっとりと自分を見る。そう、自分大好きナルシストなのだ。

「ありえへん、きもい」
「かっこええやろ」
「いやきもいわ」

これさえなければ、白石なら余裕で、例え全く知らない女の人でも、告白してオーケーをもらわないことはないだろう。勿論、人の好みは別として、一般論として。

「…そしたら彼女も出来るんやろうになあ…」
「ん?何か言った?」
「かっこええのに彼女もおらんと可哀相言うたんや」
「ほな、名前がなってや」
「…は、何に?」
「彼女に」

ノーと言えなかった私は彼の全てが好きなんだな、と思った。



100922