「クリスマス、」

僕がふと、今年のクリスマスについてダリアに振った時だった。
ダリアは一言クリスマス、と呟いて、珍しいことにそのまま意識を帰さなかった。じっと雪の振る窓の外の銀世界を睨むように、寂しげな色を籠めて見つめている。

この従姉は、僕にとって保護者であり、それ以上の形容できない何かだ。
立場は対等ではなく、彼女が当たり前の様に僕に施すものと、気紛れに振るう優しさ欲しさに僕はダリアに従順にあり続けた。
僕は気紛れでも優しさが振るわれている特別であった。彼女には人を惹き付ける何かがあり、例えるならば異能の王様。
僕は常にダリアの一番近しい場所で彼女の庇護を受けている。

だが、未だに。
ダリアという存在は僕にとって得体の知れないもので、そして覗いてはいけない深淵のようだった。

彼女について知ってはいけない。それが僕の恐れるもの。

ダリアは余りしか僕らに回さない。何の余りかは知らないが、僕にとってはそれで十分で、それ以上を望むのは恐怖でしかなかった。

今、彼女はその何かに思いを馳せているのだろうか?

誰もそこに踏み込んではいけないし、踏み込ませてはいけない。そうすれば、僕に与えられるものは形を変えない事を僕は知っていた。

僕は溶け込むようにして、存在を薄めた。

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