「嫌なのか」
「…………」
「なまえ」
チッ、と舌打ちを無意識のうちに打っていた。独占欲強い恋人なぞ持つものではない。
「ミスはミスさ。後悔はしてないけど、正解じゃないからね」
それとも…今お前の前にいる私だけじゃ不安で仕方ないかよ、ハニー?
小首を傾げて余裕たっぷりに笑んでみせてやる。
こんなん相手じゃ主導権を握らないとやっていけない。私のプライドとアイデンティティ的に。
とはいえ、それはシリウスにも当て嵌まる性質なのが厄介だ。
「素直じゃないな、なまえ」
「お互い様じゃないかなぁ。
ほら、不安ならそう言ってみせてみなよシリウス。
駆け引きとはそういうものだろーよ?」
お前が先にこの私に縋ったんだし。
まだ余裕はある。少なくとも全てのカードは切ってねぇから。
シリウスは大人げ無く、べ、と舌を突き出した。
この野郎。
奴の顔は愉快そうに見える。
────私はその舌に多少強めに噛み付いた。
どうしてこうなったのか。納得出来るまではまだ、主導権は渡してやらない。
涙目で肩を跳ねさせたシリウスは、赤い顔を伏せて呻き出した。
このロリコンヘタレめ。
おわり
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