▼ 03
何だ、と思った時にはもう身体がぐらりと傾いていた。
それを誰かが抱き止める。お陰で地面にしこたま頭ぶつけずに済んだ。ありがたや。
「大丈夫ですか?」
「……セレマ」
どっから出て来たんだ今。魔法使いの瞬間移動こと姿現しはホグワーツの敷地内では使えないんじゃなかったっけ。
くらくらする頭を抑えながら、私を支える手の持ち主に「サンキュ、助かった」と礼を言う。
唐突に現れたように思えたセレマは、私に向かってにこりと笑った。
「今の、何だ?」
体勢を戻しながらセレマに問う。ぐにゃ、と空間ごと捻じ曲がったような、鳥肌立つほどキモすぎる感覚だった。
「……悲鳴ですよ。ユニコーンの。あなたの魔力では、ユニコーンほど強力な魔法生物の悲鳴も辛いようですね」
「ユニコーン?……あ!」
そういえばそんな話もあったな、あったわ。
頭にくっついてる死に損ないのご主人様のためにクィレルが頑張ってユニコーンの血でなんやかんやしてるんだっけ。そういやアレとハリーが遭遇するのってノーバート絡みの罰則として禁じられた森に入るエピソードだったか。
その辺全部すっ飛ばしてハリー達賢者の石の存在とそれをクィレルが狙ってるって事突き止めちまってるからなあ。
流石に異変自体は感じ取ったのか、マクゴナガルとハグリッドが慌てて小屋から飛び出してくる。
小屋の向こう側に居たハリーとハーマイオニーも、やや気分の悪そうな顔でこちらに回り込んできた。
「……ミス・ローゼンクロイツ?」
マクゴナガルはセレマの存在に一瞬動揺を見せる。セレマがゆったりと頷いて返すと、マクゴナガルは森へと険しい視線を向けた。
「先生、一体何が起こっているのですか?」
ハーマイオニーの不安気な声に、マクゴナガルが制止するより早くハグリッドが「ユニコーンだ。悲鳴をあげちょる!」と咆えた。オイ。異常事態を十歳の子供にぺろっと漏らすとか、こいつ本当に大丈夫か?
「ユニコーンの悲鳴?それって……誰かがユニコーンを襲ってるって事?どうして?」
ほらみろ。ハーマイオニーはユニコーンが襲われてるって事の異常さを知っててクッソ不安になってるだろうが。
っていうか、まさかこのまま禁じられた森探索ルートに突っ込む感じなのか、これは。
しかし、んー、ユニコーンの死体探しイベントしたところで、ヴォルデモートが復活を狙っている情報が解放されるだけなんだよな。
……うーん、今後の事を思うと一年目からハリーにヴォルデモートの残機残ってる情報与えといた方がいいのか?
でも二年目は現行ヴォルくんとは全く関係ないところで話が進むし、三年目に至っては無関与だし……でも四年目ではもう復活するんだから、情報解禁タイミングとしては一年目しか無い気もするな。
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