▼ 02
「マクゴナガル先生、ダーズリーです。今お時間よろしいですか」
結局、ダンブルドアに握り潰して貰う事になった。私達じゃ庇いきれないから、もっと権限の強い人間に任せるしかないからな。
曖昧な記憶だが、ダンブルドアは巨人との交渉者を必要としてた筈だ。まだハグリッドを手元に置いておきたいだろう。森の番人も後続が居ねえし。
という訳で、ハグリッドに巻き込まれたハリーとロンとハーマイオニーを連れてマクゴナガルの私室である副校長室を尋ねる。
朝食の時間のうちに相談したい事があると言っておいたから、マクゴナガルはスムーズに私達を部屋へ入れてくれた。
「それで、一体どうしたのですか?何か変身学や呪文学で分からない事が?」
「いえ、違います」
ダンブルドアとのパイプにマクゴナガルを選んだのは、確実に全員が信用できる教師が寮監であるマクゴナガルしか居なかったからだ。
それにこれは原作情報だが、マクゴナガルは自分の手に負えない問題はダンブルドアに直接投げる傾向があるようだし。
あとうろ覚えだけど、ドラゴン関係でなんかハリー達が罰則を受けることになったのって夜にマクゴナガルに捕まったからだったし。
「実は……」
私がざっと概要を説明すると、マクゴナガルはみるみる険しい顔になっていった。
そうして当事者であるハリー、ロン、ハーマイオニーの一人ひとりから詳しい話を聴取すると、完全に頭が痛そうな様子でこめかみを抑える。
そうして少し気分を落ち着けようとでも思ったのか、戸棚からタータンチェック柄の缶を取り出して、紅茶と共に私達にそれを差し出した。
いただきます、と断って缶の中身を食べてみる。甘みの強いジンジャークッキーだった。
「私としては」
紅茶を飲み下してマクゴナガルが喋る。
「あなた方が金曜日のうちに知り得た事に対し、非常に理性的に行動した事を評価したいところです」
あー、マクゴナガルって理性とか好きそうだよな。クィディッチの時は別として。
「僕たちは得点が欲しくて友人を告発したんじゃありません、先生」
ハリーははっきりとそう訴える。マクゴナガルは微笑んだ。
「分かっていますとも」
ハグリッドは突然小屋の中へと踏み込んだマクゴナガルに目をぱちぱちと瞬かせた。
「マ、マクゴナガル先生……」
小屋の中はクッソ暑い。サウナ風呂かよ。
そんな中だというのにハグリッドは咄嗟に暖炉を背に隠そうとする。
「ハグリッド。あなたは一体、何をしてるのですか!」
マクゴナガルがそんなハグリッドを一喝した。ハグリッドはおろおろとマクゴナガルとその背後にいる私達とに視線を行ったり来たりさせる。
咆えて飛びかかろうとするファングをロンが宥め、私とハリーとハーマイオニーは素早く小屋中の窓を開けると、余計な邪魔が入らないように小屋の外に出て見張りにつく。
小屋の中からはハグリッドを説教するマクゴナガルの声が延々三十分は続き、どうやら、ドラゴンの卵は無事に孵化する前に取り上げられてダンブルドア行きになったらしかった。
説教をされた事でハリーにどんだけの迷惑と心配を掛けたのかようやく理解したらしいハグリッドが吠えるように咽び泣いて「すまんかった」とハリーに縋り付く光景を見ながら、随分あっさりとイベントが終わったなあ、と茶番に辟易する気分で森へと目を逸らす。
途端、ぐにゃりと視界が捻じ曲がったような錯覚に襲われた。
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