二次 | ナノ


▼ 27

 昼メシも食わずに一体どこへ行こうというのか、セレマは人通りの無い動く階段をどんどん上に登っていった。
 他の学年はまだ授業中だし、放課となった一年生達だって教室に用も無いのに廊下を歩き回ったりはしない。

「おやおや、大広間はそっちじゃないよ」

不審に思ったらしい絵が話しかけてきたが、セレマがすっと視線を向けると不思議と絵は黙り込んだ。
どこまで上に行くつもりなんだ?
大広間のある地上階はとっくに通り過ぎて、そろそろ八階まで辿り着く。八階は上級生が選択授業のために利用する教室があるような階で、ますます人の気配が無くなって閑静なものとなった。

「セレマ?」

そんなガランとした廊下の何にも無いところで、突然セレマは理解不能な行動を取る。
廊下の端へ行ったかと思うと折り返して戻って来てまた行って。
……ん、待てよ。この行動どっかで。

そう思った瞬間、目の前の石の壁に唐突に扉が現れた。マジで唐突だったので、私の目は何回か勝手に瞬きを繰り返した。

必要の部屋か……。どこにあるかなんて全く知らなかったが、めちゃくちゃ便利そうなその部屋の存在自体は流石に覚えていた。

セレマが私の手を引いて、その部屋に入ろうとする。
私は一瞬迷ったが、何も言わずにそれに従った。

セレマは薄っすらと微笑んだ。後ろから光でも差してきそうな神々しさだった。



「やあ、来ましたね」

「……ニコス先生、と、フリットウィック先生?」

必要の部屋の中には見知った二人がテーブルに腰掛け、ティータイムを楽しんでいた。
『部屋』の内部は大部アットホームな感じだ。床にはふかふかした絨毯が引かれ、窓から差し込む正午の陽射しは爽やかなグリーンのカーテンとレースに程よく遮られて穏やかな光になっている。部屋の壁際にはキッチンが設置されていて、横に並ぶ戸棚には大量のティーカップやケーキ皿、紅茶の缶などが並んでいた。
お茶会用の部屋、かな?

「まあ、お座りなさい」

「……はい」

フリットウィックに促されて、私とセレマは二人と同じテーブルに着席した。
テーブルにはティーセットが広がっていて、ケーキスタンドにはスコーンやらサンドイッチやら、軽食が積まれている。
フリットウィックが杖を振ると、私とセレマの目の前の空中で紅茶がポットからカップに注がれ、ケーキ皿に軽食が盛られた。

「ありがとうございます」

とりあえず、遠慮なく食べることにした。何から尋ねるかも分からない状況だしな。

prev / next

[ back to top ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -