二次 | ナノ


▼ 25

女の子達に癒されてヤル気を充填した私は、翌日に三人に事情を聞いてみた。勝手に入り浸っている空き教室には当たり前みたいな顔でドラコとセレマも居た。まあ、この二人は前にハリーがぶちまけた賢者の石云々を聞いちまってるしな。

どうやらハリーはクィレルを脅しているようにしか見えないスネイプに遭遇したらしい。そんなシーンあったっけ。映画だと夜中の図書館帰りだった気がしたけど、このへんは原作準拠なのか?

「兎に角、スネイプは賢者の石を狙って、石を守る仕掛けを聞き出そうとしてるんだ」

ロンが憤るように吐き出した纏めの言葉に「まあちょっと落ち着け」と待ったを掛ける。
ハーマイオニーはロンの意見に殆ど同意してるようだったが、会話を盗み聞きした本人であるハリーは半信半疑っぽい。微妙な顔をしながら私を見てる。こっちみんな。

「落ち着いてられないよ!スネイプはハロウィンの夜にも不審な行動をしてたじゃないか!先生たちが皆地下に降りてく中、一人だけ上の階に上がって行った!!しかもその後、足を怪我してる!!賢者の石を狙って、フラッフィーに撃退されたに違いないよ!!」

「フラッフィー?」

「僕達が見た四階の廊下に居る三頭犬の名前。ハグリッドのペットらしいよ」

「なるほど、冥界への入り口の番犬ってわけか。ダンブルドアにしては良いセンスだ」

 ドラコが皮肉げに笑う。それを興奮したロンが今にも噛みつきかねない目で睨みつけたので、私は溜息を吐いた。女の子セラピーの効果が一瞬できれる、勘弁して(白目)

「まあ、本当にスネイプ先生が石を狙っているのかには疑問が残るな。先生は闇の魔術に対する防衛術にも精通していらっしゃる。あんな何も役に立たなさそうな授業しか出来ない教師から聞き出さなければならない事項なんて一つも無いんじゃないか?」

「でも、スネイプは元は死喰い人だったって噂がある!ハリーに呪いだって掛けた!疑う理由は充分だろ?」

「単なる噂だ。証拠にはならない」

「否定したいのは分かるさ、君の家族にも同じ噂が流れてるから!!」

「……なんだと」

ほらみろすぐにヒートアップだ。

「落ち着くのよ、二人とも。落ち着きなさい。馬鹿な喧嘩してる場合じゃないのよ」

椅子から腰を浮かせかけた麻雀コンビを強制的に止めたのは我らがハーマイオニーだった。ナイス金縛りの呪い。そういや最近ロンと二人で足縛りだの金縛りだの練習してたな。

「ハリー、あなただけが会話を聞いた。でもあなたはスネイプ先生を疑っていいのかどうか、迷ってるみたい。どうして?」

「……スネイプはクィディッチの審判を買って出た。多分それは、前みたいに僕の箒に呪いが掛けられても、対処が出来るようにするため。フィールドの中央で僕を箒から落とすために呪いを掛けるなんて、どうかしてる。なのにスネイプはわざわざフィールドに立った。僕にはあの人が完全な悪人には思えないよ」

まるで自分に言い聞かせるみたいに喋ってんな。ロンもハーマイオニーもドラコも困惑顔になってるぞ。

「ハロウィーンの時だって、四階に向かった理由は別の方向にも考えられる。スネイプは石を狙ったんじゃなくて、守ろうとしたのかもしれ、ない…………?」

そこまで言って、ハリーははっと何かに気がついたように私を見た。ん?何だよ?

「ちょっと待って。僕混乱してる」

「見れば分かるわ。何に気付いたの?」

「……スネイプが石を狙ってるんじゃないなら、必然的に石を狙ってるのはクィレルの方になるってことだよね」

「そうなるな。あの臆病な無能にそんな大それた事が出来るとは思えないが」

「…………ダリア。僕達がダイアゴン横丁に行った日、漏れ鍋で誰に会ったか覚えてる……?」

震える声でハリーは私に確認を取る。私は「クィレル」と端的に答えた。

「それが何なの?」

ロンが胡乱げに声を上げる。

「……僕達がダイアゴン横丁に行った日、ハグリッドが石をグリンゴッツから回収した。その直後、石のあった金庫が闇の魔法使いに襲撃されたんだ。まだある。昨日、スネイプはクィレルに向かってこう言った。「どちらに忠誠を尽くすのか決めておいていただきましょう」……これって、変じゃないかな」

「確かに、それは……クィレルに闇の魔法使いとの繋がりが無ければそんな言葉は出て来ないはずだわ」

流石にハーマイオニーは論理的思考に強い。ハリーの感じる違和感をすぐに言葉に変換したのを、感心と共に横から眺める。

「……僕もクィレルが闇の陣営に居たなんて話は聞いたことが無い」

ぼそり、とドラコが漏らした。おいおい、そんな情報網がある事をぶっちゃけて良いのかよ、と思ったのはロンも同じだったらしい。
険しい顔で一瞬ドラコを見たロンだったが、すぐにハリー達に向き直った。……ほお。

「それって、逆におかしいよ。でもこのおかしさは、一昨年からのクィレルの変化に説明がつくかもしれない……兄貴達が言ってたんだ、一昨年のクィレルはあんな風じゃなかったって……つまり、クィレルは去年闇の魔法使いに会っちゃって、それで精神を削られてあんな風になったんだ。もしかしたらあの『服従の呪文』を掛けられちゃってるのかも……だから、それに気付いたスネイプはダンブルドアか闇の魔法使いのどちらに忠誠を尽くすのか、ってクィレルに迫った」

「それにクィレルはトロールの生態研究をしてた筈よ。ハロウィンの夜にトロールを城内へ入れたのもクィレルなんじゃないかしら」

矢継ぎ早にクィレルの情報が継ぎ足される。
それが一段落すると、四人は顔を見合わせて、頷いた。

「決まりだ。石を狙ってるのはクィレルだ」

まるで弟妹達の成長を見たような気分だった。
私が口を挟まなくても四人だけでこの騒ぎの犯人に辿り着いた事に。

最後まで傍観に徹した私とセレマは、一瞬顔を見合わせた。
さて、私達はどうする?

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