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「何か、最近よくスネイプ教授に会う」
「あー?ふーん」
眉間に軽く皺を寄せながら言ったハリーを軽く流すと、ちゃんと話聞いてる?とハリーの眉間の皺が深くなった。あー聞いてるよ一応な。
「僕を付け狙っていると思う?」
「全く」
「……結構不思議に思ってるんだけど。ダリアも僕のとばっちりで結構スネイプ教授から理不尽な扱いを受けてる方だと思うけど、あんまりスネイプ教授の事悪く思ってないよね?」
「んあ?いや、大人の癖に子供に感情撒き散らす姿勢は気に入らないぜ?でも別に自寮贔屓なところはどうでもいいかな」
「……?」
首を傾げるハリーに、だってスリザリンってそういう寮じゃん?と言葉を付け足す。
スリザリン、ってか、そこに属する純血一族と純血主義者は血を重要視する親族優先社会だ。つまり、身内を優先させていく社会スタイルが形成されている。
英国国内で魔法省が認可してる魔法学校はホグワーツだけなのだから、学生のうちからそういった生徒の集まる寮がそういう教育を優先させているのは別におかしいことじゃない。
価値観ってのは教化によって育まれるものなんだし、学校の理事会には純血主義者も含まれていた筈だ。
純血の厄介なところは、割合実力主義的な要素のあるこの魔法界において一定の影響力をきちんと保有し、その有用性を認められるだけの権威、或いは実力があるところだ。
「…………よく分からないんだけど」
「そうだなァ……、例えばだけど、私達みたいに特別に通信教育を受けたりしていない、マグル生まれの人間がホグワーツを卒業して、マグルの社会に戻ったとする。そうするとそいつはマグルとして生きていくのに必要な中等教育を全部すっ飛ばした事になる。そいつはその後、マグルの社会では物凄く生きていきにくくなるよな?」
「そうだね。凄く不利になると思う」
「で、お前も私もそれは悪い事だと思うわけだ」
「そうだね。僕達は魔法力制御のために、ホグワーツに必ず入学しないとならなかったのに、制御を覚えてマグル社会に戻った後の保証は何一つ無い」
「そうだな。それと同じだよ。スリザリンの生徒がホグワーツから出る先は他の生徒と同じ魔法界だけど、特別なコミュニティ。だから、そこで不利にならないような教育をする。ここは魔法使いによる魔法使いの為の学校だから、マグル社会に戻る生徒よりも、同じ魔法界で生きてく生徒を優先する」
細かく噛み砕いた説明をすると、漸くハリーは納得がいったように成る程、と頷いた。
「で、スネイプ教授なんだけど……」
「あ、話めっちゃ脱線してたな」
「彼が僕を狙ってる訳じゃないって思う理由を教えてくれる?……勘だけど、彼は個人的感情で僕の事を憎んでる気がするんだ」
「まあ、そんな感じはするな」
実際、時々スネイプは愛憎篭った目でハリーを見ている時がある。ハリー自身がスネイプの方を見てないタイミングを上手く見計らうように。
ちなみにペチュニアさんが嫌われているからか、私に対しても時々軽蔑とか、卑しむような視線が送られてきている。非常にウザい。
「それに彼は前回のクィディッチで、僕の箒に呪いを掛けた。君も見ただろう?」
「え、見てないぞ」
突然白眼モドキ開眼しちまったせいで目をショボつかせてたら何もかもが終わってた。
「ハーマイオニーが見たんだ。スネイプ教授が僕から目を離さないで何か唱えてたって。それで、彼のローブに火をつけて、意識を反らさせたら僕の箒は元に戻った。彼が僕を箒から墜落させようとしてたと思わない?」
「状況証拠的にはそう見えるな」
「ならやっぱり……」
「でも、次の試合の審判、スネイプせんせーが自分で買って出たんだろ。だからそれでシロ。お前を狙ってる線は無い」
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