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世界には国際魔法連盟に登録された魔法学校が11校、それと各魔法省に登録された魔法学校がいくらか、そして登録されてない魔法学校は全く数が把握出来てないがほぼ無数に存在しているらしい。
クリスマスの夜にドラコがプレゼントしてくれた海外の魔法教育事情の本の表紙を早速捲り始めた私は、その時点で魔法族の社会が国家ではなく単なるコミュニティー、同族共同体でしかない事を思い知った。
11の魔法学校についての情報は見出しに簡潔な一文で纏められていた。
ホグワーツ、ブリテン島、古代魔法と伝統が息衝く
ボーバトン、ヨーロッパ西部、錬金術の権威
ダームストラング、所在地不明、純血と闇の魔法と誇り高き決闘術
ワガドゥー、アフリカ、世界最大の魔法学校及び原初の魔法
イルヴァーモーニー、北アメリカ、若く新しき魔法族の台頭
カステルブローシュー、南アメリカ、世界一の魔法動植物学
「……ん?あれ?11って書いてあるのに6校しか目次に載ってないじゃん」
何でや。眉根を寄せて本の表紙や裏表紙をひっくり返しながら見返してみると、皮の表紙にものすげえ分かりにくい感じで『上巻』と記されていた。
まじかよ……多分これ、ドラコも気づかなかったんじゃねーの。下巻がある事を知っていたら多分下巻ごと送ってきただろう。
うわー、残りの5校がどこにあるのかめっちゃ気になるなこれ。
ありそうな所と言ったらどこだろう。四大文明的には中国、インド、エジプトとイラク周辺とか?いやニコス先生の母校とかもあり得るな。ギリシャの魔法は哲学と共に歴史が古そうだし、大学もあるらしいし。
そんな風に感心したり呆れたり首を傾げたりしながらやっと魔法族の国際社会の取っ掛かりを得て楽しんでいたのだが、ふと隣の部屋からハリーが出る音が聞こえて、私は本から意識を逸した。
時計を見るともう十ニ時を過ぎている。トイレか?
しかしハリーの足音は階段を降りずに私の部屋のドアを前までやって来た。
「……ダリア」
「ハリー?こんな時間にどうした?」
答えるとかちゃり、と静かにドアが開く。
けれどその向こうに、ハリーの姿は無かった。
「…………。」
ああ、透明マント自慢しに来たのか。相変わらず無垢なショタである。
でも残念だったな。私は白眼モドキを手に入れてしまったのだ。姿だけを隠しても、こちらに移動してくる魔力の塊は丸見えだぜ。
目の前まで足音を忍ばせて移動してきたハリーからマントをひょいと引き剥がすと、ハリーは目を見開いて固まった。
「よう、用事はなんだよ」
「……あ、え?……見えてたの?」
「いや?でも気配がしたから」
息とか衣擦れの音とかな、と言って笑うと、ハリーは納得したのか、がっくりと肩を落として残念がった。
「ニンジャスキルをもっと磨く必要があるって事か……」
ちょっと待ったお前何に成ろうとしてるんだ。
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