▼ 09
前夜に本を読んでたらついつい読み耽って夜更かししてしまった。
という訳で私は目をしょぼしょぼさせながらクィディッチを見ている。寝不足にこのハイテンションな熱狂っぷりはツラいンゴ……。
目の前で試合が行われていてさえ、私は全くクィディッチに興味を持てずにいる。それは私と共にロンとハーマイオニーによって引き摺られてきたセレマも同様らしい。
ぼんやりとした表情で、上空で止まったままのハリーを見上げている。私も恐らく周囲からすれば似たようなもんだろう。
私は球技系は自分でやらなきゃ楽しくないタイプだし、楽しそうなゲームでなけりゃやる気も出ないタイプだ。クィディッチはちょっと……ルール整備が不十分なゲーム過ぎて……。
「ハリー!頑張ってー!ハリー!!」
ロンとハーマイオニーは上空で静止したままのハリーに激を飛ばしている。
その時だ。ぐにゃり、と視界に黒い半透明の線がハリーに向かって通ったような気がしたと思ったら、突然ハリーの箒がコントロールを外れてぐるぐるがくがくと暴れ出した。
え、何だ今の。ちくわ大明神。虫か何かみたいだったけど。
「……呪い?」
確かここではスネイプ──と見せかけてのクィレルがハリーの箒に呪いをかけてハリーを地面にぶち転がそうとしてやがるんだよな。
まさかまさかそんなテラ厨二な能力に目覚めたとは思いたくもない、が、悲しいかなここは魔法界で、他人の魔力の流れを見る『目』は隣に座るセレマによって既に実在が証明されている。
「どうされました?」
隣でセレマが囁く。
「いや、何か、線が……」
え、ええー、ちょ、ええー。そんな白眼みたいな能力いらないんですけど。
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