二次 | ナノ


▼ 07

11月も半ばに近くなると、週末に予定されたクディッチの第一試合に校内は俄に浮き足立ってくる。にわかファンが増えるらしい。
ガチ勢のロン・ハリー・ドラコに引きずられてハーマイオニーやエステラもクディッチの話題ばかりを口にしている。
まあ、あの二人は流行りものに釣られやすいというか、ミーハーっぽいところが元々あるのだが。

私はあんまりクディッチには興味がないので、同じくあまりスポーツに関心の無いセレマに付き合ってもらい、自分の魔力の『純化』という作業に励んでいた。

セレマ曰く、私の魔力は本当に雀の涙レベルらしい。
魔力の効率を上げないと遠からず実技試験を通れずに落第、退学する未来が待ち受けてるようだ。

別に魔力のコントロールさえ身につければホグワーツに来た意義は満たされるので、退学して、マグルの学校に通ったっていいのかもしれない。だけど今の私には、そうあっさりとこの学校を去りたくない理由がある。
去れない、ではない。去りたくない。
あいつ──クロガネ・スズキというスリザリン生と、私の現実の鈴木鉄音という男の関係性を知るまでは。

……いや、もっとガキっぽい理由だな。
つまるところ、姿も名前も同じ癖して、あいつが私の事を見てないっつーのが気に食わないだけだ。

それはともかくとして、魔力の純化である。
文字通り魔力を高純度にする事によって、少ない魔力で呪文の威力を大きくさせる。アルコールの純度を上げるように、不純物を除くのだ。

「あなたの魔力は元から純度は高めなのですが……経験に頼るしかない効率上昇よりはすぐに効果があるでしょう」

「まあ、瞑想は慣れてるからなぁ」

魔力の純化は瞑想を通じて行う。他にも禊だったり、ヨガだったり、やり方は沢山ある。日常的に座禅による精神統一を行っているので、手順の把握も早かった。
座禅は余計な思考や感情を排除して自分自身と向き合う作業だが、瞑想は……少なくともセレマが私にやらせようとしている瞑想はそうではない。自分の身の内の魔力を捉え、循環させるのだという。就学前に魔力コントロールばかりに勤しんでいたからか、それほど苦労せずに感覚を掴めた。

精神修行として古来から伝わるものって眉唾じゃなくてちゃんと意義があったんだな。

「ああ……確かにこうして改めて自分の魔力を知覚すると、澱み?みたいなのがある気がするなぁ。自分の意思に反するというか……うまく言えないけど、気持ち悪い部分」

科学的な側面から見れば健康以外に殆ど何の効果もないはずのその行為が、魔法的側面から見ると途端に極めて重要なプロセスへと転化する。

「それが不純物にあたるもの、ですね。澱みだと感じるのであれば、あなたにとってはそれは澱みなのでしょう」

「えーと、これを?消すの?」

はい、とセレマが頷く。私は少し考えてから、自分の魔力を川に見立てた。流れる水だ。澱むところは、流れる魔力で押し流す。
それだけで、大きな澱みがいくつか融けるように消えていく感覚がした。

「……なんか変わった?」

「ええ。私の目からは、はっきりと違いが見えますよ」

「エルフの目は魔力を『視れる』のか?」

魔力を『視る』事は、普通の魔法族には出来ない事だ。視るには特別な才能がいるという。
視るだけなら時々マグルにもいるらしい。まあ、そういうマグルというのはマグル生まれのスクイブ、つまり魔法使いになれるほど魔力は無いが、全く無いと言うわけでもない存在だとの事だ。

「エルフは、視えますよ。当たり前のように。私の目がエルフのものなのかは分かりませんけれど。」

「ふぅん……」

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