二次 | ナノ


▼ 06

魔法理論を学ぶには、その理論が発展してきたとおりに順序だって学ぶ方が解りやすい。
ニコス先生の授業の根幹にはこういう考えがあるらしく、いつ、どこで、どこの誰が、こういう理論を打ち出した……のような、理論史とでも言えばいいのか、そういう勉強が基本になっている。
ぶっちゃけて言えばそれは超簡略化したヨーロッパ史だ。
ニコス先生が上手い事宗教の話やマグル社会の話をぼかしたり、抜かしたりしているが、既にそれを知っている人間からすればこの授業が歴史教育を兼ねている事が良く解る。
ホグワーツでは三年生になってから選択授業としてマグル学を取れる。逆に言うと、その授業を取らないかぎり、生粋の魔法族として生まれ育った魔法使いはマグルについて何一つ知らんままに学校を卒業するし、もしかするとそのままマグルに関わらずに一生を終えるのだ。

マグルと魔法族……ウィザードがその社会を分離させたのは近代の事。が、今でも使われている魔法や魔法理論の大半は近代以前に発見されたものなので、その理論の推移には当然マグルの社会の変遷が絡んでくる。
当然だ。
当時の魔法族がキリスト教の修道士だったとか、寧ろ聖書の預言者が当の魔法族であっただとか、そういうレベルでマグルと魔法族が関連しているのだから。
中世頃のキリスト教からすれば魔法使いというもんは須らく悪魔崇拝者の筈なのだが、当の魔法族が十字軍に参加していた事もあるというからお笑いである。悪魔崇拝とまで言わずとも、魔法族は確実に異教徒だ。
ウィザードの視点からすると、神や天使や悪魔というものは全て概念生物であるらしい。魔力を与えてこの世に具現化させ限定的に使役ができるような相手に対し、遥か上位の存在だと考えるのは確かに難しいかもしれない。まして信仰なんか何の冗談だというレベルだろう。

ただ、そういった事を説明したニコス先生は、最後にちゃんとこう付け加えている。

「一つ心に留めておいて欲しいことがあります。それは、魔法を使うための理論が今説明しているただ一つだけではないという事です。魔法は無限にあり、勿論その為の理論も無限に存在します。僕は母校で三通りくらいの魔法体系を学びました。
この学校で習う事は確かにこの学校で学ぶものだけで完結します。ヨーロッパで最も一般的な魔法体系ですから、普通に生活するのであれば、ホグワーツで学んだ呪文以外は必要無いでしょう。でも、確かにそれ以外の魔法があり、そして今でも一部では使われているという事を、忘れないで欲しいと思います」

魔法理論の授業で学ぶ事は、セレマの話と繋がる事が多々ある。
イギリスは島国で、そこそこ閉鎖的な国だ。それはマグルだけでなく魔法族もそうなのかもしれない。
寧ろ魔法族に関しては、世界でもトップレベルに発展した社会だという話なので、その閉鎖と自己完結はマグルよりも上かもしれない。




それはそうとして、こうして魔法族の実際の社会に触れてみるといろいろと疑問が出てくる。
……私はこの二ヶ月の間、ずっと疑問に思っていた事がある。ホグワーツの生徒の数の事だ。

ホグワーツの生徒数は1000人程度だという。対して英国の人口は6000万を超える。
魔法族は魔力の多さによって寿命も延びるし、そもそもセレマのように人間以外の血の混じった奴もいるから一概には言えないが、それでも英国魔法族の十代の人口総数が1000というのはあまりにもおかしいだろ。総人口が一万人前後というわけでもないなら人口ピラミッドが完全に逆三角形になってるレベルだぞ。
ヴォルデモートによる内戦のせいで一時的に出生率が落ちているのかもしれないが、それにしたって少なすぎる。英国国内における魔法族の割合10000/60000000。六千人に一人の魔法使い。まあそこまでレアでもないのか?弁護士と同じくらいの比率だろうか。
ロンドンに千人ちょっと魔法使いが住んでるくらいの割合だ。ちなみにロンドンの人口は800万くらい、比較として東京の人口は1300万くらい、私の生まれ育った群馬はちからをあわせる20万人、だ。

まあ魔法族の大半は純血ではないにせよ魔法族生まれな訳で、そいつらはほぼ確実にマグルの出生名簿に登記してないだろうから、詳しい事は分からんが。
ちょっと少なすぎるよなあ、とは思う。
マグルの人口統計に含まれてる魔法族だって何割かは居る筈なのだ。私みたいな、ね。

十代の人口に対してホグワーツの生徒数が少ないのであれば、他の子供はどうやって魔法の制御を学ぶのだろう。
セレマへの反応からして、ウィザードの魔法学校であるホグワーツにセイジや海外の魔法族がいるのは非常に珍しい事だと思う。だがその存在が社会的な問題として目されるほどには、彼らの人口は多い筈だ。
なら、そういった生まれの子供達は、どこで魔法や理論、魔力の制御を学ぶのか。魔法族生まれなら家庭内学習もあるらしいけど、一流の魔法使いとされる連中が大抵子供をホグワーツに入学させている以上、それだけでまかなえてるとは思えない。

……原作に殆ど登場しなかった海外の魔法界の事や、原作では触れられていないのに存在する魔法族。

すっっっっげー気になるんだよなあ。
もやもやするっつーか。

なのに情報源はセレマとニコス先生くらいで、国内で派閥対立があるせいか、この学校では基本的にセイジ関連の事は徹底的に排除されている。
原作五巻のあたりでも描写されていたけど、この学校って結構政治色強いよな。一学校の枠を飛び出して英国ウィザード魔法族専用養成機関みたいになってるような。

あー、とにかく、いろいろいろいろいろいろいろいろ気になるんじゃあああああ!!

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