▼ 05
私が眠っていたのは一晩だけの事だったらしい。
授業を終えたセレマが握った左手を通し、体に変調を来さない程度に私の魔力の調整をしてくれていたらしく、次の日、つまり十一月一日の夕方には医務室から退室を許された。
「もう大丈夫なの、ダリア?」
「ああ、もうなんともないぜ」
セレマに付き添われて医務室から出ると、丁度ハリーが後ろにロンと、気不味げなハーマイオニーを連れてやって来た。私を迎えに来たらしい。まったくうい奴である。
ハリーの肩をトンと叩いてから物言いたげなハーマイオニーに視線を向ける。ハーマイオニーはもじもじと指先を遊ばせたが、やがて頭を下げた。
「あの……ダリア、昨日はごめんなさい」
「ロンと仲直りはしたか、ハーマイオニー?」
「したわ。昨日のうちに」
「ならいいよ。それに私は何も謝られるような事されてないし」
欲しい言葉は謝罪ではない。I'm sorryはロンにだけ言えば十分だと思う。
「でも私、あなたに迷惑をかけたわ」
ハーマイオニーはおずおずと頭を上げると、そんな事を口走った。今日はブラッシングに身が入らなかったのか、いつもより栗毛が広がり気味だ。
「迷惑ねぇ。んじゃ、私がよく分からん魔法理論についてハーマイオニーに質問するのは、『迷惑』なのか?」
「まさか!」
後ろでセレマとハリーがくすくすと笑う。私もニヤニヤと笑った。ロンだけは何やら呆れたような目を私に向けている。
「ならそういう事さハーマイオニー。友達ってのは助け合いをして初めて友達なんだぜ。迷惑の掛け合いをするのは、ただの他人だろ」
「あ……」
ようやく意味が分かったらしいハーマイオニーは、可愛らしく顔を真っ赤にさせた後、ぼそぼそと小さな声で「ありがとう」と言った。かわゆす。
あーそうそう、どういたしまして。
「んじゃ行くか。どこ行くんだ」
「ダリアの行きたい所。休みたいなら談話室に行けばいいし、動きたくないなら大広間。何でもいいよ」
珍しくにっこりと笑ってハリーが言う。ご機嫌だな、と突っ込むと、そう言えば僕達ににマクゴナガル先生が十五点くれたみたいだよ、とはぐらかされた。
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