二次 | ナノ


▼ 03

「ガイアが俺にもっと輝けと囁いている……」

「ちょっとダリア!意味わかんない事言ってないで避けて!」

「回避余裕でした」

石床を砕く勢いと破壊力を持って振り下ろされた巨大な棍棒をターンするようにして避け、飛び散った細かい破片を物理防御効果オンリーのプロテゴもどきで防ぐ。原作では習得が難しいとされてたが、魔法を防ごうと思わなければ基本的には魔力をそのまま放出・固定するだけだからだいぶ簡単に身につけられたやつだ。イメージ的には、巨大なガシャポンの中に入るみたいな感じなんだけど。

さて、目の前にはトロールである。なるほどこれがトロールか、完全に映画ハリポタで見たやーつ。
まあ、ここでトールキン式のトロールが出て来たら即死だったけれども。知能が明らかに違うのでね。たった三体に対して何人のドワーフが蹴散らされた事やら……太陽が無いと完全に死にゲーとかなにそれ怖い。

原作の流れと同様、ロンからの罵倒に傷ついてしまったハーマイオニーは折角のハロウィンパーティをフケて女子トイレで泣いていた。そこへトロールが侵入、ロン及びハリーは何故か私を引きずってハーマイオニーの保護作戦を開始した。以上、現状説明です。

「あー、ハリー。どう倒す?」

「トロールの倒し方なんて知らないんだけど!?」

狭い女子トイレの中でトロールが滅茶苦茶に振り回す棍棒を避けつつ、さてどうするかと考える。すばしこいハリーはトロールの気を引いては回避を繰り返すという最も危険な役割をこなしていて、どうやら作戦を立てる余裕も無いらしい。

「ハーマイオニー」

「キャー!!助けてー!!」

……駄目だ、作戦どころか、ハーマイオニーちゃんは完全にパニックです。
デカイ声で叫んだハーマイオニーにトロールのヘイトが上がったらしく、トロールは口から汚らしく泡を飛ばしながらそこへ棍棒を振り下ろした。蹲るハーマイオニーを間一髪、ロンが引きずり出して事なきを得る。ナイスフォロー。

「ロン、そのままハーマイオニーの口を抑えといて」

本来ならハリーがトロールに飛び付き、ロンが浮遊呪文でなんやかんやしてトロールを倒す筈だが、既にハリーはヘイト稼ぎ回避、ロンはハーマイオニーの救出という役割についてしまったので、今更原作通りにトロールを倒す事は出来ない。
どうやら、手が空いている私がどうにかトロールを倒すしかないらしい。
私はローブを脱ぎ捨てると、それに向かってウィンガーディアム・レビオーサと唱えた。
浮遊呪文というのは、事前に私が考えていたような反重力呪文というより、魔力の糸で吊り上げるようなイメージのほうが合っているらしい。某忍者漫画の傀儡の術か何かかな。チャクラ糸でびゅーんって感じ。
という訳で私のローブをまず吊り上げ、それを使ってトロールの視界を防ぎ。ついでその辺に散らばった瓦礫を一気に天井近くまで吊り上げて、魔力でコーティングし、杖先を振りおろすようにして思いっきり瓦礫の塊をトロールの頭へとヒットさせた。

「ナイスエイム私。ハリー、ロン、退避!」

恐らく棍棒と同様のダメージを与えられた筈である。思惑通りトロールはぐらりと身体を揺らし、物凄い音を立てて床へと倒れた。
伝った衝撃からか、ぱらぱらと天井から砂が降ってくる。

「……勝った?」

「おう、見ての通り」

半ば呆然と呟くロンに軽口で答えながら、トロールの顔面に張り付いた自分のローブを引き剥がす。うえ、鼻水ついてる……スコージファイ。

「これ、死んだの?」

ようやく正気を取り戻したらしいハーマイオニーが倒れ込んだトロールをまじまじと見ながらそう言った。いや、気絶しただけだろうとハリーがそれに答える。
それを聞きながら、私は急速に自分の身体から力が抜けていく目眩のような感覚にべたりと女子トイレの床に座り込んだ。
え、なんだこれ。

丁度そこへマクゴナガル先生を筆頭にして、教授達がバタバタと女子トイレに入り込んでくる。
マクゴナガル先生はトイレの惨状に目を剥くと、今にも倒れそうな私に駆け寄り、肩を支えてくれた。

「これは──一体、どういう事です」

信じられない、というような声が先生の口から漏れた。他の先生達は──トロールを見て悲鳴を上げているクィレルを別として──皆、絶句しているようだった。

「……ハーマイオニーがトイレにいたので、迎えに来たら……、トロールがいて……」

酷い目眩に襲われながら何とかそう言った。嘘ではない。私はここにトロールが居ることを知ってはいたが、ハリーとロンは純粋にトロールの侵入騒ぎを知らないハーマイオニーを迎えにここへ来ただけだからだ。

「ミス・ダーズリー、どうしたのですか、怪我を!?」

「いいえ──でも、目眩が──」

何とかそこまで言ったと思う。
次の瞬間には、私の視界も思考もブラックアウトしていた。

prev / next

[ back to top ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -