▼ 03
ペチュニアが難色を示すと、ドーナツ皿とミルクティー二つを抱えハリーを引っ張って自室に飛び込んだのだ。飛び込んでドアにつっかえをすると、彼女はベットで腹筋を始めた。
ベットはかなりギシギシという音がする。
勿論七歳のダリアとハリーとイケナイコトしている偽装などではない。あと八年は待つべきだ。
では何かと言うと、ダイエットと、物音による駄々こねの二重効果を狙った攻撃である。ちなみに、たまにハリーの口にドーナツを入れるのも忘れない。
腹筋を五回やったら、背筋。終われば一息ついて、腕立て伏せ。どう考えても140pあるかないかの身長に、50s近くある体重は戴けない。絶対に。
ピザは嫌だの一心で動かない身体を動かすけど、マジ疲れる。あーやだやだ。
目下目標は40sだ。140の身長に対して大体釣り合う体重は(140−100)×0.9=36sだが、40sを切れたら許容範囲。
筋トレを少しして休み、少ししては休み。とうとう一時間が経ったとき、ハリーが痺れを切らした。
「ダリア、君、どうしたの?」
「どうもしない。どうかしてたんだろ」
ハリーがなんだかんだで三つドーナツを食べ終えた時点で、私はドーナツの大皿を彼から離した。ちなみに私が食べたのはほんの一片である。
「よしハリー、行くぞ」
「ど、どこに?」
「どこってそりゃキッチンに決まってんじゃん。サランラップ持ってくるんだよ」
「え?」
「だから、ドーナツの保存すんの。あのブタ親父…ごほごほ。失礼、私の父上が全て食べてしまわない保証はない」
保存しとこうぜって事だよとかみ砕いて言えば、ハリーはやはり怪訝な表情のまま私を見ていた。
私はさっさと一階に降りると、おろおろしていたままのペチュニアさんに一切の視線を向けずサランラップを手にする。
そのまま踵を返そうとすると、ペチュニアさんがあわあわと息を吸った。計 画 通 り 。
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