二次 | ナノ


▼ 02.兄弟子と街へ

ある日の事だった。

「二人組の南斗聖拳の使い手とはお前等のことだなぁ〜?」

「何だ貴様は?」

荒野を横断している途中、バイクに乗った50人程の男達に囲まれてしまった。抜け出すのは容易いけど、この開けた場所で走ってバイクから逃げるのはちょっと無理かな。それに、私達の事を知っているのが気になる。なんの目的で態々会いに来たのかな?

「俺は聖帝の配下の一人、南斗朱流拳のバドー様だぁ〜!てめえらを俺の部下にしてやろうと思ってな」

聖帝の配下の部下。私とレイさんは顔を見合わせた。面倒くさそうなやつだ。殲滅?そうだな、殲滅しておこう。どうせ悪党だしね。頷きあって背中合わせに飛んだ。

「あぎゃ!!あ、あれ?何ともねぇ」

「動けば死ぬよ」

「ほざけっ……ぎゃあああっ?!!!」

動いたおっさんがバラバラになって死んだ。驚いた周囲の連中も臆して逃げ出そうとして血飛沫を上げる。私の得意技の一つ、残鳥斬という技である。暫くじっとしてるだけで実害が無くなる技なのに態々動くなんてね。
と、レイさんの方でも悲鳴が上がった。私の屠ったのの倍くらいいる男共の中でレイさんが本当に華麗に舞っている。あの動きは湖面遊か。レイさん本当に強いなぁ。流石、伝承者の名を冠するだけある。

ものの二分程で周囲の荒くれ共は肉塊と血溜まりになってしまった。残鳥斬で生き残った人は結局今日もゼロ人か。人の忠告を聞かない奴ばっかりだな。

「フン……雑魚共め。キリヤ、怪我は無いか」

「無いです」

方や腕といった見逃しやすいあたりを見て、どこにもかすり傷すらない事を確認する。レイさんに関しては、あれだ。寧ろ聞くのは失礼になるレベルだ。

「聖帝ってなんの事でしょうね?」

「さあな」

レイさんと二人、首を傾げてみるも心当たりは無い。まぁそれは今は置いておこう。
連中の乗っていたバイクを見分する。幾つかカスタマイズとガソリンの残量を見ていくと、燃料タンクのメーターが半分以上残っている上乗りやすそうなデザインのバイクを見つけた。よし、これが一番使えそうだ。

「レイさーん、これにしましょう」

「ああ。じゃあ、頼む」

乗り回すのはレイさんではなく、私だけれども。
自分の身体のサイズよりだいぶ大きいバイクだが、足さえ届けば何だっていい。どうせ殆どブレーキも踏まないし。

レイさんを後ろに乗せて発進する。目指す先は女好きの悪党で知られるクズが幅を利かせているという街だ。アイリちゃんが見つかるかもしれない、だがそんな所で見つかって欲しくはない。アイリちゃんの清らかな身体が汚されていたら、そのときは、アイリちゃんに手を出したやつ全員八つ裂きの細切れにしてやる。



街についたのは薄暗くなってからだったので、ローブを着て、フードを深く被った。流石に仮面を付けたら怪しすぎるしね。身長が高く声の低い私は、体型と顔さえ誤魔化せればある程度性別を誤魔化せる。女とバレれば面倒がついてまわるしね。

「俺はヤツのことを探ってくる。キリヤ、お前は……」

「晩御飯の調達でもしておきますよ。でも、絶対に一人で乗り込んで行ったりしないで下さいね。

もしアイリちゃんが見つかったら、……どうすれば私の収まりがつくのか、わかってますよね?」

レイさんは私を真っ直ぐに見つめ、ああ、と頷いた。アイリちゃんは私の幼馴染で、本当に本当に大事な子なのだ。胸に七つの傷を持つ男は絶対に、これ以上ないくらい惨たらしく殺してやらなきゃ気が済まない。
それをわかっているレイさんは、自分より遥かに弱い私であってもちゃんと連れて行ってくれる。ちゃんと私を対等な仲間として扱ってくれている気がして少し嬉しかった。

待ち合わせ場所を決めてからレイさんと別れ、宣言したとおりに夕飯となる食糧を買いに行く。普通のお店はもう閉まっているだろうが、どこか酒場のような所へ入れば食べ物くらいある。
核戦争以来、水が貴重品になった。それからというもの、水の代わりに酒が水分補給の主な手段となっている。水より保存が効くのだ。そういう訳で、この世紀末であっても酒場は存在する。飲み屋ではなく、どちらかといえばウエスタンなものだが。

何軒か様子を伺ってから、最も平和そうな酒場を選んだ。中では私のような旅装の人間が集まり、情報を交換しながらもそもそとご飯を食べている。旅をする理由は様々だが、決してその数は少なくない。悪党共に街を破壊されて逃げてきた人が大半は占めるだろうけれど。

「いらっしゃい。何にするんだ?」

「飯と水を買いたい。ああ、食ってはいかないよ。持ち帰りで頼む」

「飯は何人分出しゃあいいんだ」

「二人分。すぐ食べるから日持ちはしなくていい」

「あいよ」

カウンターに立っていた親父に注文をして、水筒を二つ出した。受け取った親父は座りな、と近くにある小さなテーブルに私を促す。大人しくそれに従うと、後ろに座っていた男がなぁ、と声を掛けてきた。

「あんた、どっちの方面からきたんだ?」

「西の小さな街から。あそこ、水が高いんだ」

「ほぉ〜ん。ま、ここの街は確かに水は安価だな。ただ……」

こうして情報をやり取りするのはよくある事だった。安息の地を求めて移動する人々にとっては、情報の入手は死活問題でもある。男が顔を顰めて言い淀んだのは、この街の危険性について言おうとしたからだろう。そういった情報はなかなか伝えにくい時もある。

「わかってる。ライドウのことだよね?」

「あ、ああ。そうだ。もし、あんたの連れが美人な女だとしたら、悪いこた言わねぇから出来るだけ早く街から出な。ライドウはひでぇ女好きの外道だからな。」

連れはものすごい美人の男であるので問題は無い。わかった、とだけ返して、丁度よく店の親父が商品を持ってきたのにテーブルを立った。

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