二次 | ナノ


▼ 14

午後の授業は魔法魔術論という、これまた原作では言及されていない授業だった。
使う教科書は夏休みの間散々お世話になったアドルバー卜・ワフリング著の魔法論である。もし教科書をざっとでも読んできたならば、或いは先日の変身術の授業を真面目に受講してたなら(マクゴナガルの授業を真面目に受けない奴は確実に居ないだろうが)、この教科がどれだけ重要なものなのか嫌でもわかる。魔法を使うための基礎や知識を学ぶ教科だからだ。

担当の教授はラテン系の血が濃く入った黒髪黒目、浅黒い肌のおっちゃんで、ぶっちゃけた話日本の某俳優兼モデルさんにそっくりだった。ローマ人の役をやったことのあるという日本人離れした顔のあの人である。つまりナイスミドルって事だ。生成り色のローブを着ているのもそう思わせる一因かもしれない。

「やあ、諸君。魔法魔術論を教えているニコラオス・サマラスです。呼び名れないと思うので、気軽にニコス先生とでも呼んでください」

おっちゃんことニコス先生は穏やかにそう自己紹介した。ギリシャの人かな……?

「ギリシャ人かと考えた人が何人かいると思います。正解です。私はギリシャの魔法学校、マギ・フィロソフィーアカデミアを卒業しました。この学校について聞いたことがある人はいますか?」

何人かの手が上がった。ニコス先生は近場の生徒から一人ずつ知っていることを喋らせた。要約すると、ギリシャの名門私立魔法学校であり、徹底した形而上学を始めとする哲学教育と、それを基礎にした高度な魔術理論が特徴らしい。

「とは言え、私はその後東洋・西洋を問わず魔術理論を学んで回りましたので、哲学を下敷きにしたものばかりに傾倒している訳ではありません。変身術にはぴったりですが、例えば妖精の呪文に対しては、魔術式をさんざん複雑化させてしまうだけですからね。」

授業が始まると、この前置きがまったくそのままの意味であることが分かった。彼はまず魔術理論に利用できる主な思想系統を世界地図に書き込んでいった。そして最後にヨーロッパだけを囲むと、一年ではまずはイギリスのものを学びます、と宣言した。

イギリスには、ウィザードとメイジという二種類の魔法族が存在する。メイジはウィザード側からの呼び名であり、本人達の自称はセイジ、つまり『賢者』だ。実権を握っているのは全てウィザード魔法族であり、対立するメイジ魔法族はウィザード魔法族に自分達の情報を公開しないのでその社会の事は詳しくは分からないが、彼らの使う魔術理論とウィザードの使う魔術理論と異なるものであるという。
この学校ではウィザードのものしか勉強しないけれどね、とニコス先生が付け加えた。



二時間の間ずっと板書をしていたので、物凄く手が疲れた。シャーペンを持つハリーと私より、羽ペンで羊皮紙にガリガリやっている他の連中の疲労はもっと酷かった。

「もう、あったま痛いよ!」

夕食の道すがらにロンが呻いた。激しく同意。
膨大な情報量に脳が悲鳴上げてるんですけど。

prev / next

[ back to top ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -