二次 | ナノ


▼ 16

水曜の朝、早くも朝のふくろう便でドラコの前に実家から大量の菓子が届いた。
ホグワーツって結構甘味類も出てるよな?マルフォイ夫妻は息子を豚にするつもりなのだろうか。

「これは概ね配るようだよ。ほら、」

不躾なことを考えてるのをお貴族様スキルですぐに見破られた。ドラコは肩をすくめてそう弁解し、一種類ずつ私達に配ると、残りの半分をグリフィンドール寮のテーブルに積み、もう半分をスリザリンのテーブルへ持っていった。

「お坊っちゃんだねぇ」

「それ、君が言える事なの?

「おいハリーそれはどう意味だ」

ハリーは単にアレ、と上空を指差した。なんだよ。
視線を滑らせると、そこにはヘドウィグがいた。彼女が華やかにラッピングされたやたらと大きな箱を持っていたので、私はがくりと肩を落とした。
ハリーの言うとおり、フォイ家を茶化せるような私ではなかった。
ヘドウィグは私の前にその箱を置いて、一度旋回するとふくろう小屋へ戻ってしまった。

「ねぇ、それ何?」

気になって仕方が無いというようにロンが首を伸ばして聞いた。無言で箱を開けると、みっちりとシャルボネル・エ・ウォーカーのチョコ菓子が詰まっていた。添えられたカードには勉学に励むように、の文字。

「うちの親からの入学祝い、かな?」

ふうん、とロンが口をへの字に曲げるのと、唐突に後ろから声が聞こえたのは同時だった。

「ウワーッ!ねえ、ダーズリーの持ってるそれ、シャルボネルのチョコだろ?!」

興奮気味に叫んだのは、マグルが両親だというディーン・トーマスだった。ハリーとロンは同室の仲もあってか、ぱっと彼が座るためのスペースを確保した。

「ねえ、このお菓子マグルの間じゃ有名なの?」

ディーンのテンションの高さに訝しげなロンがそう聞くと、ディーンと、それから斜め向こうで朝食を食べていたシェーマス・フィネガン、あと何人かのマグル生まれがギョッとした顔でロンを向いた。

「知らないの?」

信じられない、といった口振りのディーンに、ロンが肩をすくめて何だい、シャルボネルって、と聞く。答えたのはディーンではなく、ディーンの後ろから重そうな鞄を抱えるように持ったハーマイオニーだった。

「シャルボネル・エ・ウォーカーは、王室御用達のチョコレートを作っているメーカーの事よ。」

「僕はディーンに聞いたんだ、君にじゃない」

魔法倫理の授業以来、ハーマイオニーとロンの仲はピリピリしていた。二人の討論は平行線を辿ることが多いのだ。ハーマイオニーはツンと顔を背けると、さっさと教員テーブルの近くの空いているスペースに行ってしまった。

「あの知ったかぶりの何にでも首を突っ込まなきゃならないのが気に入らない」

「博識を目指すのはいい心掛けだと思うし、知らない事を教えてくれるのは彼女の親切だぜ、ロン」

一応窘めたが、ロンは機嫌の悪いままそっぽを向いてしまった。ええい、ガキめ。

「ただいま……どうしたんだい?」

「あっ、ドラコ。お菓子貰いました。美味しかったです。」

他寮生のいざこざに戸惑うドラコと、他人のいざこざに無関心なセレマであった。



1時限目からの闇の魔術に対する防衛術は、魔法史と同じくらいにつまらん授業内容である上、教師が何喋ってるんだかわからんという最悪なものだった。何とかしないと全く授業の成果が無いまま一年が終わってしまう。ヤバイねこれは。
案の定、昼休みにはドラコも巻き込んでの批判大会となった。

午後の変身術ではもう一度マッチ棒を針に変える練習と、応用で木の枝を羽ペンに変える練習を行った。
昨日の勉強会のお陰で、私とハリーもハーマイオニー並には二つを変身させることが出来た。ロンは半分だけ。昨日話の途中までしか聞いておかないから……。
セレマは開始後三秒程度で終わらせてしまったので、ネビルにアドバイスをしていたが、逆に混乱させていた。その魔法理論は完璧だけど、ネビルには理解できないみたいだよ、セレマ。

「今年の私の寮の新入生は、変身術に熱心な生徒が多いようで、私としては大変嬉しいことです」

そう言って、マクゴナガル先生は何点かグリフィンドールにボーナス点を加点した。


その日の夕食でも、ドラコは当たり前のような顔でグリフィンドールの席を陣取り、マグルのインフラについて熱心に聞いてきた。電気ガス水道について教えてやると、何やら羊皮紙にメモをしていた。勉強熱心なこって。

「そういやさ、ドラコ」

「む?」

む、てお前ww11歳の返事じゃないぞそれ。

「グリフィンドール内でだけど、勉強会するグループを作ったんだ。入るか?」

「入る」

即答だった。シャーペンの頭でふにふにもちもちのドラコほっぺを突いておいた。



水曜が終わろうとしても、ハリーは視線を集めていた。しかし、一緒にいるドラコとセレマが同じくらいに目立っていたのもあって、平然としていた。
翌朝からはグループ自体が異色のものとしてホグワーツ中に広まっていた。メンバー全員が一躍学校の有名人である。
まあ、英雄ハリー・ポッターにウィーズリーの末弟とマルフォイ家の嫡男とローゼンクロイツ姓の謎の新入生、しかもそれらを纏めているのがハリーのイトコのマグル生まれである私という構成なのでね、至極当然の成り行きではある。

prev / next

[ back to top ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -