二次 | ナノ


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午後の呪文学こと妖精の魔法は、フリットウィック先生が出席を取っている間に椅子から転がり落ちるというパプニングはあったものの授業そのものはケチのつけようも無かった。
何しろこの学科は魔法使いの普段の生活に関わる呪文を含む。実践的な魔法の基本というわけだ。それ故にフリットウィック先生の指導はとても丁寧だったし、幾つか教科書に記載された非効率的な記述の横に先生が独自に考えた完結かつ単純なものを書き込みしたりもした。

呪文学が終了し、放課になると、新入生達は皆くたびれてしまって、大広間でぐだっと伸びていた。ドラコもごく自然に私の隣に座って休んでいる。

「お疲れですね」

「セレマ!どこいってたんだ?」

そこへ、初日だというのに朝から姿を消していたセレマが戻ってきた。一体今まで何してたんだ。

「校長先生にご用事がありましたので、そちらへ」

セレマが私にのみそう耳打ちする。他の連中に説明する気は無さそうだ。
授業の評価基準を知っておく必要があるだろうと判断してノートを貸すと、お礼にと小さな包みをセレマは私に寄越して、教授たちに事情を説明してくると大広間を出て行ってしまった。

「ダリア、周り見て」

今度はハリーが耳打ちしてきた。とっくに気づいてるよ。
ローゼンクロイツ姓と、この世のものとは思えない美貌に、大広間中の視線がセレマに集まっていたという異常な状態の事は。

「セレマって結局何者なの?」

ロンの零した疑問は全校生徒が同じ事を感じているに違いない。

結局セレマは夕食を過ぎても帰ってこず、明日に響かないようベッドに入らねばならない時刻をまわっても寮に姿を表さなかった。



翌朝、朝の日課の為に六時に寝室から下りた時には、セレマは既に卯花色のエンパイアドレスを着て、若草色のフードを被り、談話室でモーニングティーに興じていた。清らかな乙女像を全面に押し出して、静謐さの中に佇む姿はここが魔法界であっても殊更神秘的に見える。

「おはよう。セレマ、いつ寝た?」

「おはようございます。寝ておりませんよ。あまり必要ないので」

エルフまじぱねぇ。感心しながら靴紐をしっかりと結び直すと、丁度ハリーが降りてきた。身なりが整えられていることを確認して、じゃあ、とセレマに声をかける。

「どちらへ?」

「校庭。朝一時間のウォーキングが日課なんだ」



1時限目は魔法倫理、今回のトピックはマグルとのこれからの関係性。これもマグル生まれと魔法族生まれで意見が真っ二つに別れ、議論は白熱した。
マグル側、ハーマイオニーの主張は付かず離れず友好的な関係を結ぶべき、というもので、理由は産業革命以降、マグルの科学力は魔法族が考えるよりも強大なものになっているから、という事だった。
身近なところに電化製品の一つも無い生粋の魔法族の生徒たちは科学がどのようなものかすらイメージできていないので、そんなものたかが知れている、というスタンスを崩さなかった。そんな彼等の主張は出来る限り関係を持たないほうが良い、といものだ。

魔法族がマグル社会から身を隠して数百年経つが、マグル社会への認識が現実から酷く乖離している。

「ハリーはどう思う?」

「僕は魔法使いが専門技能の使い手として再びマグルに存在を明かし、密接な関係を築いたほうがいいと思う。これから先、マグル側が把握出来ないことはどんどんなくなっていくと思う。魔法使いがその存在のすべてを隠すのは難しくなると思うよ。
例えば、人避けのされているホグワーツだって、あの廃墟の城を取り壊してニュータウンを造ろう──なんて言い出したら、今の人避けの呪文は効き目が無くなるよ。組織だって仕事として動くマグルたちが、用事を思い出したくらいで引き返すなんてことないもの。つまり、国際機密保持法の改正だね」

ハリーの意見は更に議論を激烈化させた。

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