▼ 01
おいおいおいおい。
いくらなんでもこれはひどい。
でっぷりとした七歳のブロンド少女…違うよ、雌豚にしか見えねーよ……に、いきなりクラスチェンジした現代日本人女子校生は悲しげに呟いた。
「ファック!!絶望した!!」
「キャアアアあなた!ダリアちゃんがあんな言葉を!!」
そして自分のすぐ傍にいた馬面骸骨とブタが両親的ポジションにいたことにも絶望した。
原作の名前はハリポタで、私の名前はダドリー…だった筈がダリア。知らねーよ誰だダリアって。私の名前はもっとジャパニーズだよ。「いよ」とか「はなこ」クラスのジャパニーズネームだよ。
一ヶ月程前からダリア・ダーズリーになってしまったようである私は、頬杖を尽きながら半眼で母親・ペチュニアをじろじろ見た。
そして言う。
「…ママ、ハリーどこ」
「も、物置の中よ」
一ヶ月前に突然起きた最愛の娘錯乱事件から、ペチュニアさんはダリアを心配しているようである。錯乱してしかもやさぐれたんだから仕方ないだろうが。
「ふーん。じゃあ、それは何?」
ハリーと違って、当たり前だがダリアという存在には質問が許されていた。
キッチンに立つペチュニアさんが次々と揚げている小麦粉の固まり。
「ドーナツよ」
「へぇ」
素っ気なく返事をして、私は椅子から降りた。勿論、成り代わりだとか憑依だとかの夢小説で良く聞く罪悪感だとかそういう意識はゼロである。知らん。
いいじゃないか、この世界からクズみたいな性格なブタが一匹消えたんだ、喜ばしい事だ。しかしまぁ、替わりに入った私も違う意味でクズに近いが。
「ヘイ、ハリー」
物置の戸をこんこん叩くと、中から黒髪の少年がのそりと出て来る。有名なハリー少年である。
「……ダリア?」
「うんまぁそうだけど、なんかその名前スゲー微妙だから複雑な気分。」
ハリーははぁ?という表情をした。なんでもない、と手をひらひらさせて、ちょっとこいやオラァみたいなオーラでついて来いとか言ってみる。
prev / next