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それきり口を噤んだセレマから、私も視線を外した。
考え事が増えた。
個人的な感想だが、本格的な魔法を使うのはセレマ属する魔法族の方な気がする…。少なくとも私の知る、マグル世界に伝わる魔法使いのイメージはそっちだ。アレイスター・クロウリーとかね。
そして今の話から推察するに、セイジに関することについてはホグワーツの在学中には触れることは少ない、筈である。
そしてもう一つ。私の事、バレてね?実は心臓が異様な速さで動いている。けどセレマはもうしゃべる気は無さそうだし。
………もういいや。考えるのやーめた。
一気に訪れた気の疲れに辟易して、眠ってしまおうと目を瞑った。
ほぼ半日の間を座っているとなると、動いてないのに物凄く疲れる。たまにゴソゴソと体制を変えたけれどどうにも怠さが蓄積されたまま、暗くなってきた外を見た。もうそろそろ着くころだろうか。
そこへ、こつこつと控えめにドアがノックされる音が響いた。誰だよ。振り返るとちょっと戸惑った顔のドラコがいる。
「おっ、ドラコ。久々だな」
「やぁ、ダリア。ホグワーツにつく前に再会出来たね」
ドアを開けてやるとまごつきながら私の隣に腰掛けた。セレマは泰然と微笑んでいるが、多分ドラコ怯えてんぞ。
「今日はハリーとは一緒じゃないのか?」
「おう。私が阿呆な癇癪起こして喧嘩中だ。汽車に乗ってる間は冷静になれるか自信がないからホグワーツ着いたら謝る予定」
「ふふ、君達は双子のようだな。実は、ハリーの方には日の出ている内に会ったんだ。同じような事を言っていたな。珍しく癇癪起こしてるけど、ホグワーツ着いたら謝ってくるだろうから待つと。」
ふーん。双子ねぇ。
「まあ、何年も一緒に生活してるからな。」
「兄弟ではないだろう?ハリーって、あのハリー・ポッターじゃないか。君は何なんだ?」
「イトコさ、マグルの方のな。つまりMr.マルフォの嫌いな嫌いなマグル生まれの穢れた血さ。」
あ、大分嫌味ったらしい言い方をしてしまった。
ちらりとドラコに視線を向けると、少々眉を顰めてはいるものの、それはムカついてるとかいう感じじゃなかった。
むっつりと口をへの字に曲げてじとりと私を見ている。なんだよ。
「……君は、僕が君のせいであれからどんなに大変だったか知らないんだ……。
それにマルフォイ家への認識が足りないようだな。当家はマグル社会での爵位さえ保っているのだが。」
「えっまじ?純血の魔法族なのに?」
「魔法族がマグル界から完全に自らを隠匿するようになったのはご存知の通り1689年だが」
「こ難しい嫌味をそんな年から吐いてると口が曲がるぞ」
「君が言えた事かそれは」
確かにそれもそうだった。
「それで、何してたんだって?」
「イギリス魔法省の制定したマグル生まれ保護法とその関連法の調査と他国のものとの比較、それから現状の魔法界とマグル界の文明水準の差異の調査だよ。君のせいでここ200年は純血思想に尻尾を振り続けていた我が家がフランドル魔法省のようにマグル行政機関と魔法省の連携を考えるようになった」
そりゃ、……うーん、大変だな。
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