二次 | ナノ


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まだ空いてる列車内で、真ん中あたりのコンパートメントに居座る事にした。
荷物を上げてコンパートメントの扉を閉め、簡単な"避け"呪文をかける。
簡単過ぎて多分ハリーにしか効果無いとは思うが。

窓際の、日光が当たらない方へ座るとパーカーのフードを被った。目を閉じて精神統一だ。
何であんなに苛立ったんだろう。
冷静を保たねば怪我はついて回る──怒れるときは拳を握るな、というのが師範の教えである。
後でハリーに一言謝んなきゃな、と考えていた思考をふつりと掻き消して、私は精神統一を漸く開始した。



十分後。
列車が汽笛を上げた。腕のアナログ時計を見れば成る程、出発時間が近い。

歯車程度の機械であれば、ホグワーツでも狂わないんじゃなかろうかと推測を立てた。この時計は要は実験台である。
基板とか使ってる機械は多分アウトだと思う。

と。

こんこん、とコンパートメントのドアのノック音。ん、誰だ?

ドアに開いたガラス張りの窓に視線を向ければ、白に見えるほど色素の薄い髪と、これまた透けて見えそうな程白い肌に、繊細な造詣で綺麗に整った顔。その割には甘く融けそうな翡翠色の瞳が印象的な──そんな少女が、立っていた。

やべ、めっちゃ可愛い。

少女よりも早くコンパートメントのドアを開けた。いったいどうやった私。

「こんにちは。座ってもよろしいでしょうか?」

「こんにちは。もちろん構わないよ、寧ろ嬉しいくらいだ」

挨拶を返した少女の声が私の脳髄を蕩かせた。
何だこの娘APPがもはや25を突き抜けて人外のそれである。

驚いたことに私と同じくらいの身長のその少女に笑いかけながら、コンパートメントの中へ通した。嬉しそうにふんわりと笑う少女の可愛さぱねぇ。


後から思い返せばそれは、奇跡であり運命の出会いだった。
非魔法族、自然的科学世界の未来を故郷とする私と──超自然的な力……魔力、魔法の最奥に息衝き生きるその少女が──天文学的な数字の確率で、しかしこれほどまでなく因果律に則って、この日この時この場所で。
確かな邂逅を果たした、世界の両端で在りながらその中間に属そうとしている二人の──始まりで、ある。

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