二次 | ナノ


▼ 13

バーノン親父の発車させた車は、中の人間の空腹と渇きを考える事も無く散々ガソリンを無駄に消費した後、どこか大きな町外れの、ビジネスホテルの方がまだマシに思えるというひっでえホテルの前に止まった。
乗っているだけでくたくたになった私は、バーノン親父が何かあったら一家心中を実行する人間だということを頭に刻む。全く、とんだ親父だな。



「眠れないのか、ハリー」

「……ダリア………」

夜中。
窓辺に座るハリーに、声を掛ける。
私はハリーの傍にテーブルと自分の分の椅子を運び、テーブルの上に自分の荷物からトランプを出して放り投げて。

「大富豪でもやらない?」

にっ、と笑った私に、ハリーはトランプを手に取り切り出した。



次の日もまた、バーノン親父の奇行は続いた。ホグワーツのふくろうに関しては大量の郵便配達ごくろーさんです。何という紙の無駄遣い。古紙100%利用再生紙使えってんだ。環境破壊やめろよ仮にも魔法使いだろうに。

夕方になって海岸近くでバーノン親父に車に閉じ込められたときは、本気でやばいかと思った。私にも魔力があるって事は、何が起こるかさっぱり分からないしさぁ。
マジで心中してまう感じなの?まともな筈の娘まで魔法使いだと知って絶望に暮れて車ごと入水でもするのか。マジで勘弁してくれ。
保険として一応靴下に硬貨を何枚か入れておく。窓叩き割り用のサップである。
あぁ……今日のアニメ見たいんだけどなぁ……。

そういえば、明日はハリーの誕生日じゃ無かったか。
家じゃケーキ出してやるくらいしか出来なかったから、去年はハニー達と小さなホールを借りてパーティ開いたっけ。……正直に言って、自分の誕生日より楽しいのは間違いない。

戻ってきたバーノンさんは、機嫌よさ気に海の孤島のボロ小屋に私達を連れて行った。益々危ない。流水の上を渡れないのは吸血鬼じゃなかったっけ?飛行機でほいほいドイツやら日本やらに渡っているハリーと私から考えるに、魔法使いには悪天候以外妨害になりそうな要素はない。ふくろうはどうか知らないが。
ポテトチップス一袋とバナナ四本という、酷い飯を食わされた後、ダーズリー夫妻は二つある部屋の内の奥の部屋へ引っ込んで行った。
外は嵐。毛布に包まりながら寒さに沈黙する私とハリーのせいで、波と風と雨の音が響く。

「…………はぁ…」

自然、溜息が漏れた。
腹は減ってるし寒いし、外は煩いし小屋の中の匂いが酷いし、マジで寝る気にもならん。
仕方が無いので、トランクから非常食を引っ張り出した。ハリーにもそれを分けて、二人で食べる。俺とハリーは成長期なんだぜ、身長伸びなくなったらどうしてくれる。
天然水をこくこく飲んで、さてどうにか暖炉に火は付けられないかと思案する。
んー………。火の種になるようなもんが無いな。諦めよう。

ボロソファに一枚だけ毛布を敷いて、そこに座り込む。時計を見れば既に時刻はPM11:58だった。

「ハリー」

「ん…何」

「明日、ちゃんと家に帰れたらケーキでも焼いてやるよ」

「……ありがとう」

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