二次 | ナノ


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師範の組んだ旅行スケジュールは恐ろしくカツカツだった。成田到着後速攻で電車に乗り品川へ、そこからは東海道新幹線で京都へ。京都には師範の実家があるとのことで、今回の旅行は京都観光がメインだ。

初日は移動だけで終わり、師範の実家の寺で座禅をして終わった。師範の実家の寺というのは、師範の家の分家筋の寺である。
師範の家系は大変由緒正しいもので、京都に深く根付いた一族らしい。師匠の何代か前は華族で、貴族位持ちだったそうな。何それ凄い。

師範は精神統一の方法として瞑想をさせることが多い。あの気持ちよさが癖になる。警策を頂いたのは最近入門したばかりの子達ばかりであった。残念なような、ホッとしたような。

移動ばかりで気疲れしたのか、大部屋にズラッと並べられた布団にバテ気味のハリーが倒れ込んだ。

「おい、大丈夫かよハリー」

「つ、疲れた……」

布団に顔を埋めたままもごもご言っている。明日からもハードなスケジュールが続く予定なのだが、そんな様子で大丈夫か?
青い顔でくったりしているハリーは全く大丈夫そうには見えないので、仕方なく、疲れた体を起こした。

大部屋を出て薄暗い廊下を真っ直ぐに進む。師範が何かあれば来るように、と言った部屋を目指して。
目的の部屋には師範も師範代も居らず、師範の親族の女の子が一人で窓の外を眺めていた。

「あ、あら?どうしたの?…ええと、ワッツハップン?」

what's happenじゃなくてwhat's happendが正しい"どうしたの?"という言い方だが、ここは天下の日本である。英語布教率はご存知の通りで、1989年のハイスクールスチューデントであるこのジャパニーズガールからI can't speak English以外の言葉が出てきただけマシというものだ。

「どうも。師範どこにいるか知ってますか?」

英語で返したら多分会話にならないと判断して、日本語で返した。二年ぶりくらいにまともに日本語喋った気がする。

「わ、凄い日本語上手だね」

「練習しました」

嘘です。母国語です。脳内ではいつも日本語でもの考えたりしてます。女の子はさらりとおかっぱ頭を小さく揺らして笑った。可愛い。

「おば様…ええと、師範は今当主様……うーんと、師範のお父様に挨拶しに行ったから、しばらく戻ってこれないよ。どうかしたの?」

「弟がすごく疲れているみたいなんで、ホットミルクを貰えないかと思って来たんです」

ハリーはあまりに疲れていると眠れなくなる性質で、ホットミルクで入眠させるのが常套手段となっている。師範と師範代にはその事を事前に伝えてあったため、今こそ必要だと思い頼みに来たのだ。
残念ながら二人共留守だったが。

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