▼ 03
甘いミルクティーとノンシュガーのストレートティーを淹れて、ペチュニアさんの揚げたドーナツ共々トレーに載せて二階へ。ペチュニアさんは私がハリーを出した事に気付いているだろうが、うるさいのは面倒なので何も言われないうちにとっととダイニングから出た。
トレーを持って階段を上がるだけの動作がキツい。くっそーぜってぇダイエットする。
「ハリー、開けろ」
両手が塞がっているので容赦なく部屋の中のハリーを呼び付けた。何拍かして扉が開く。窓から入ってくる日光に当たったハリーは、暗い物置で見るよりも顔色が悪い様に思えた。
「立ってたの?」
「え、うん」
「アホかよ…。取り敢えずそこの勉強机の椅子にでも座っとけば」
まだまだ戸惑うハリーにはやくしろと顎でしゃくった。ちゃんと着席したのを確認して、ミルクティーを渡してやった。目を白黒させるハリーに少し笑う。
「飲めそう?」
「うん」
「よし」
ハリーがミルクティーを啜るのを横目で確認しつつ自分の紅茶を飲む。正直日本のブレンド茶葉との違いがよくわからん。
その後ドーナツを一個半ほどハリーに食わせ、私は残った半分を食べた。残ったやつは、全部隣にある自分の部屋その二に置いた。
「ハリー。お前、明日からは日中は隣の部屋使え」
「えっ?」
「なに、物置のほうがいい?」
「嫌だけど……どうして?」
「質問は禁止っていううちのルール忘れたの?」
質問禁止って便利過ぎだろ。無論使用は躊躇わない。ハリーは首を傾げながら私を見ていた。質問は禁止、いいね?アッハイ。
「後、ドーナツ食っとけよ。お前細すぎ。パシリにもならん。それにパパとママが虐待してると思われたら面倒だし。」
「食べていいの?」
「食べちゃいけねえものを食っとけなんて言うと思うのか?」
「なんでもない」
早々に口を噤んだハリーに、学習が早いなと笑った。
「ママぁ、ハリー連れて歩きたいんだけど」
ミルクティーのカップを下げるついでにそう声をかけると、ペチュニアさんが目を剥いた。
「あの子を?」
「うん。だからね、あのガリガリの身体をどうにかして、恥ずかしくないような服を買ってやってよ。あんなのが血の繋がったあイトコだなんて、私すごくイヤ。骨の浮き出てブカブカの服を着てるから乞食みたいだし。」
ペチュニアさんは忙しく視線をキョロキョロさせて、どうにか私の要求を聞かなかった事にしたいようだった。残念だがそうは問屋は卸さない。視線による追及は止めてやらなかった。
だって、みっともないんだもの。身なりの良いダーズリー一家の中に見窄らしい子供が紛れ込んでる。勿論、みっともないのはハリーでなく親共だ。大人にもなって、子供を感情のはけ口にするんじゃない。
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