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某SAN値がガリガリ削られる系神話がこの世界のリアルの一つであるという絶望的事実を知った私は、それを忘れることにした。ナニモナカッタヨ。いやマジで。
あれ、私もしかしなくてもSAN値減ってね?何にせよあれが出てきたら死亡確実過ぎる。
というわけで、心の平穏の為にアザトなんとかさんの事は忘却の彼方へと押しやる事にした。しかしなんであんなものがマルフォイ家にあったのか。
そんな事はさておき、私の寮生活について話をしようと思う。
今年のグリフィンドール生は36人で、ま、平均値だ。そのうち女子は17人いる。寮の寝室は四人用の部屋として区切られているので、四人部屋が二つと三人部屋が三つ出来ている。私は三人部屋で、セレマと同室だ。もう一人の子はロサーリオ・アサーニャ・ブエナフエンテという。在英スペイン人だそうで。
このロサーリオちゃんこと愛称ローズは悪戯好きで一般的に勉強が苦手で、性格はめちゃくちゃ楽天的で底抜けに明るい。マジで眩しい。しかも不注意からとんでもない事故を起こす。勘弁して。
で、そのローザがなんと、何をしたんだか全く不明だが、入寮一ヶ月も経たないうちに寝室を吹き飛ばしやがった。勘弁して。
「何をしでかしたのか勿論ご説明頂けますね?ミス・ブエナフェンテ」
「ブエナフエンテです、先生」
青筋立てたマクゴナガルが物凄い目で椅子に座ったローザを見下ろす。相当お冠だな。当たり前か。吹っ飛ばされた部屋の中、どうにか荷物だけは無事だった。ベット下に片付けていたお陰で持ち物が炭にならずに済んだようだ。ちなみに、私はセレマの荷物というものを一度も見たことが無いので、今回彼女の荷物がどうなったかは知らない。
「……魔法薬学の予習で爆発薬作ったんですけど、びんが入ってること忘れてしもて、かばんをベットに放り投げました。かばん置いて談話室に降りるつもりやったんで、丁度ドア占めた時に爆発しました」
「いい加減に注意深く行動する事を身につけた方が宜しいですよ、ミス・ブエナフエンテ」
「はぁい…」
マクゴナガルは深ァい溜息を吐いた後、部屋の中の炭と化したもの全てを消し去った。そして部屋の中を幾つかの魔法を使って綺麗にしたあと、そこにシンプルなベットを三つ置いた。
「次の夏休みに改装をする予定でしたので、その予定を早める事にします。二、三日で終わりますので、荷物は全てトランクで管理して下さい。
……ミス・ブエナフエンテ以外は既にそういう習慣がついているようですが」
改装するのか。初耳だ。インテリアの気になる私は軽く手を上げて先生の気を引いた。
「先生、内装ってどういう風になるんですか」
「それが、ミス・ダーズリー、実はまだ決まっていないのです。まだ一年ほどの時間がありましたからね。」
「え、じゃあ先生は大急ぎで内装を決めて壁紙とか家具とか買い集めて部屋に設置しないといけないんですか?この新学期始まった忙しい時期に?」
「そうです」
肯定したマクゴナガルの顔には流石に疲労の色が濃い。
「よければお手伝いします」
内装に興味があったし、マクゴナガルとのあいだの距離をもうちょっと無くしたいなと思っていたところだったからそう申し込んでみた。マクゴナガルは私の今のところの学業成績を思い出しているようだったが、問題なさそうだと判断したのか、ではお願いします、と首を縦に振った。
「夕食の後に私の研究室まで来て下さい」
「はい」
うまいこといったとガッツポーズした。
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