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ハーマイオニーと同じくらいには魔法使えるようになっときたいなーと考えながら魔法論、基本呪文集に立ち向かった三週間は……あっという間だった。マジか。
しかしハリーはレパロを使えるようになったし。私は攻撃的基本呪文を脆弱だが一通りマスターしたし。
ダリアの滲み出る凶暴さが如実に表れていると淡々と口にしたハリーにはチョップをごすっと入れておいたが。
別にマグル出身には我らが科学があるから生活臭溢れる魔法は必要ねーじゃん。
処で、私はダーズリー夫妻と話し合い、学習塾の通信講座をハリー共々取ることにした。無論マグル界での将来に備えてである。
やるからにはやってこいとそのでっぷりとした肚を括ったのか、バーノンさんは上位成績に留まらなければ家に戻し、片方が家に戻ればもう一人も戻すと宣った。
ほうこの俺に喧嘩売るってのか。いい度胸だ。
そんなこんなで9月1日。
ペチュニアさんがわんわん泣いた。
なんだこの人情緒不安定?涙目くらいならまだしもガキのようになく母親とかもうみっともなさ過ぎて社会的親子の縁切りたい。
私の母はこんなんじゃない。
…………ん?
ちらっと脳裏に過った言葉に、自分で眉根を寄せた。
私の母。久々にその言葉が頭に浮かんだ気がする。
そして、背筋がぞっと冷えた。
「ダリア?」
ハリーがどうした、という表情で私の顔を除きこむ。
奴の緑の虹彩に、金髪碧眼のダリア・ダーズリーが写っている。
「………まだ、出発まで時間あるな。
ハリー、来い。久々の手合わせだ」
苛ついた子供が黒いクレヨンでお絵描き帳をぐしゃぐしゃと塗り潰すような、そんな感覚に脳が痺れていた。
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