二次 | ナノ


▼ 31

「そう、実にいい日だ。
日曜は郵便は休み。今日は忌ま忌ましい手紙なんぞ──」

喜々としてもう一度日曜いい日発言をしようとしたバーノン親父。その後頭部に黄色がかったものが直撃し、ボケた戯言は中途半端に止まった。

あ、今日か。

手紙の洪水が起きてから、私はやっとこの日が何なのかを思い出した。

廊下に皆して避難すると、バーノンさんは必死に平静を取り繕いながら家を出る事にすると話し出す。
口ひげの半分を引っこ抜いた豚親父の余りの混乱振りにケケケと内心で笑う。メシウマだ、他人の不幸は蜜の味。

与えられた5分で部屋の戸締まりを確認し、下着を多めに衣服類と、非常食と飲み物を旅行用のトランクに詰めて階下へ降りる。
落ち着いているハリーと私は5分ギリギリに玄関前に立った。が、ダーズリー夫妻はまだだ。

「5分たったな。…さてハリー、うちの豚親父はとうとう頭がパーンしたようだが」

「その言い草はどうなの…」

「まぁ、多分何とかなると私は予測するぜ。」

口角の片方を吊り上げて笑えばハリーは溜息をついた。

「…手紙を叔父さんに渡したのは、ダリアに考えがあっての事なんだよね?」

「あぁ?当たり前だろ」

「じゃあ、僕はダリアを信じるよ。ダリアの何とかなるって予測を」

「……そーかい」

全幅の信頼とは、斯くも気持ち悪いものなのか。
私はハリーの額を指弾し、にやにや笑った。額を抑えてぽかんとした顔をするハリーに、また笑った。





バーノン親父の発車させた車は、中の人間の空腹と渇きを考える事も無く散々ガソリンを無駄に消費した後、どこか大きな町外れの、ビジネスホテルの方がまだマシなホテルの前に止まった。
乗っているだけでくたくたになった私は、バーノン親父が何かあったら一家心中を実行する人間だということを頭に刻む。全く、ひでえ親父だな。

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