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「パパ、ママ!」
「ダリアちゃん!!無事だったのね!!」
「うん、ガラスの傍にはいなかったから皆無事。ママ達は?」
「大丈夫よ、さぁ早くここから出ましょう!」
阿鼻叫喚の地獄絵図ってこういう事だろうか。
全ての爬虫類が逃げ出している───毒蛇だけではない、小型とはいえ鰐だっているのだ。ぼんやりしてたら命さえ危なくなる。
「!」
と、入口に差し掛かった時だ。
「毒蛇……!」
うようよと毒蛇が集まっているのだ。──扉が閉まっているから、外に出れずとも光に反応して集まって来てるのか!!
「後ろから鰐が来てる!!」
どうすんだよ、ここでゲームオーバーなんてあるのかよ!!
その時だった。
「 退け! 」
シャア、と隣から蛇の威嚇音のようなものが聞こえた。それを聞いた蛇達がザッと道の端に除ける。
────ハリーだ。
爬虫類館から転げるようにして飛び出した私達は、青褪めた顔で互いの姿を確認した。
「皆無事だな?」
「無事──だと言いたいけど、ピアーズが顔を殴られてる。
不良がいたんだ。物陰でそいつらに絡まれてたから、逆に助かったよ。」
バーノンさんの声に答えた私は、その視線をペチュニアさんへ滑らした。
ハリーの傍にいたのは私とペチュニアさんだけ。つまり、ペチュニアさんはハリーのパーセルタングを聞いた事になる。
「ピアーズ君、大丈夫かね?」
「自業自得だよパパ。先に挑発したのはピアーズなんだ。私とハリーは自衛出来たから良かったけど、ピアーズは……」
私が冷めた口調で言えば、ピアーズは信じられない、という顔で私を見る。知るか。
私は二年も前に利口になれ、と言った筈なのだ。頭が悪くなきゃあの状況で相手を挑発する訳がない。
「………バーノン、帰りましょう。あんな事があったんだもの、ダリアちゃんも……」
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