口調とかいろいろ捏造



最近一番わからないこと。なんで俺なんかがモテてんだろう。俺なんかがモテてどうすんだろう。そういや妹が読んでた漫画のタイトルがまさに俺の疑問をそのまま表したようなやつだった気がする。
最近の一番の悩み。キレイな若いおねえさん二人に取り合いされること。マジでなんでだ。きみたちもうちょっといい選択肢あるんじゃないの?なんで俺なの?
そりゃあ美人二人に挟まれて悪い気はしないさ。しないけど、俺はとにかく居た堪れないし、今は昼飯が食べたい。

「こんにちは加古さん、私旭さんに相談があってお時間いただいてるので、ちょっとお席外していただけません?」
「ああ、月見さん、ごめんなさい。今日は私、旭さんをお昼ご飯に誘ってたの。その用事あとにしていただける?」

ごめん、蓮ちゃんの相談とか聞いてないし、望ちゃんのお昼ご飯の約束も知らなかった。とか言えないし。
一人が俺に会うたびにどこからともなくもう一人が出てきて一触即発するのやめていただけません?右腕に蓮ちゃん、左腕に望ちゃんで腕組んでくるのやめていただける?何気にガタガタするからお盆に載せてるラーメンが危ない。とか言えないし。
依然俺を挟んで言い争う二人を引き連れてとりあえず座る。一応ここ、本部の食堂なんだよね。人目があるから。とりあえず座ろう、お二人さん。

「いただきまーす。二人もなんか頼みなよ、お昼まだなら…奢るよ」

こんなふうに言って、いいんですかありがとうございますってノってくれるのは蓮ちゃんだ。おーいいよ好きなのどうぞーって、年下に結構弱い俺はそういう素直な反応見せてくれると嬉しかったりする。
で、旭さんそれじゃなかったら何にしてました?って聞くのが望ちゃん。じゃあ私それにしますから一口ずつ交換しましょうって言うタイプ。
妹が二人いる自分としては年下の扱いはそれなりに慣れてるわけで、なのにこの二人が真逆のタイプなのがいけない。
なんなんだよ真逆とかさ。19歳と20歳でこんな美人で、選び放題じゃんきみら。きみたちから見たら25歳なんておっさんじゃん。高収入高学歴高身長なんてとんでもないし。あっ自己嫌悪に陥りそうだ。

「ねー…なんで二人は俺のことそんな…」
「なんでって」
「ねえ」

あっこういうときは仲良くなるんだ。二人で顔見合わせて「ねー」とかするんだ。まあこれあくまで俺を挟んでやってんだけど。美女に挟まれて食うラーメンうまい。ラーメン、なんかよくわからないままモテてるやつに食われておまえも幸せだろう。もうこうなりゃヤケだ。ははは。

「私たち二人とも旭さんに助けられて、それで憧れてボーダーに入ったんですよ」
「私が16歳のときで」
「私も16のときに」
「ふうん、4、5年前か。……そんなに?」
「そりゃあ、そんな多感な時期ですから」
「あんなカッコいい隊員が命の恩人になったりしたら」
「落ちたって仕方ありませんよねえ」
「ねー」

こうやって二人でキャッキャしてんのはすげーかわいいんだけどなあ。おっさんの癒しだよ。俺を挟むと殺伐とするのはどうかと思う。かわいいまんまでいてくれ。
つーか4、5年前ねえ。あの頃は若かった。俺まだB級だった。A級上がるのにだいぶかかったからなあ。でもそのあたりはちょうど第一次大規模侵攻のときだ。たくさんの市民が危険に晒されて、その中でものちのちボーダーの戦力になる子たちはちゃっかり助けてんだから、俺ってなんなんだろ。
そうか二人はそんなに俺のことを。こわい。女の子ってスゲエ。だってさっきまでぴょんぴょん飛んでた花がビャン!!て感じで散って今また殺伐モードだもん。こわい。

「ねぇ旭さん、この後空いてますか?」
「加古さん、さっき私が言ったこと聞こえなかったんです?私相談があるんですよね」
「あら、でもお昼の予定潰しちゃったんだから少しくらい遠慮してくれたっていいんじゃないかしら」
「人聞きが悪いことをおっしゃるのね。潰すつもりなんてこれっぽっちも」
「まあ、うふふ」

こわいって。まあもう慣れたもんなんだけど、こんな仁義なき戦いしてんのに、二人は堂々とぶつかって正攻法でくるから、その心構えはさすがボーダー隊員。勿論望ちゃん蓮ちゃん個人からお誘いを受けることもあるけど、二人とも相手を思いっきり出し抜くようなことはしない、っていうか。
昔いたいけな女子高生の時期に俺が助けちゃったせいかわからないけど、二人とも俺には自然体だ(と思う)から、素直に、いい子たちだなーかわいいなーとは思ってるけど。
うーん。
だとしたってなんで俺なんだろう。本当に。
迅のやつ、この未来視えてたんじゃねーのかくそ。言えよ。いや何するわけでもないけどこっちにも心構えってものがだな。

「旭さんっ」
「旭さん!」
「んええ……」

ああ、俺このあとランク戦しようと思ってたんだけどなあ。かわいこちゃん二人に両腕取られちゃあ、そうそう抜け出すこともできない。ランク戦なんか言い出せる雰囲気じゃないし。
さて今日はどうやって、この仁義なき戦いを終結させようか。



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