Kurobasu


オオカミなキセキと兎な相棒組…ゴクリ。面白そうだなぁと妄想を綴ってみました。
あくまで妄想なので全CPの話を書く前提ではないです申し訳ありませぬ。。。
その名の通りキセキの世代がオオカミでその相棒組(でない人もいますが)が兎です。現実世界、オオカミが兎を捕食するかはわかりませんがそういうことにしておいてください。あと普通オオカミは群れで地位の高い1カップルしか交尾しちゃいけないとかそんなのも無視してます。脳内補正大事!!





【】内は種族としての表記。


【兎(黒子/笠松/桜井/高尾/氷室/降旗)】
上記の六種は兎の中でも特殊な部類に分けられ、個体数が比較して少ないことが特徴。それぞれの種族にも代表的な特徴がある。総じて他の兎よりも美味。そのため狼の格好の餌食にされる。種族の名を苗字として持つ。
兎は万年発情期。しかし単に繁殖行動を起こすだけでなく稀に性別を間違えた行動に出ることもある。発情期では甘い匂いを発し、その間に捕獲されると狼にとっては最高の状態で兎が食せると言うご馳走と化す。症状が軽い個体もいれば重い個体もおり、兎により個体差がある。上記の六種の特殊な兎はいずれも発情期の症状が重度の種が大半を占める。近年兎の雄の雌化が見られる。

【狼(黄瀬/青峰/緑間/紫原/赤司)】
狼の中で群を抜くトップクラスの実力を持つ上記の五匹のことを敬意を表して【キセキ】と呼称する。その基準は狩猟や体格など。キセキに及ばない狼は威圧に負けて逆らうことすら出来ない。現在帝光地区の狼は一部を除いた全てがキセキの支配下及び赤司の指揮下に属する。
狼の発情期は一年に一度程度。雌狼は交尾の相手を選り好みするのでキセキが選ばれがち。取り合いになって狼の中でも熾烈な戦いが起こる。ちなみにキセキがそれに応じたことはない。年間を通した性をめぐる対立や欲求なしに、狼は相手への愛情や協力関係を楽しむ事ができるため、青峰などは性が絡まない時期に雌狼に構ったりする。面倒臭いから。

【兎狩り】
狼の繁殖期に見られる大規模な捕食活動。発情期から繁殖期の間、決まって兎が標的にされることから称される。子を産むための栄養として兎は捕獲しやすく栄養面も良いことも理由の一つ。

【地区】
帝光を取り囲むように誠凛や桐皇、海常や秀徳、陽泉や洛山などがある。





黒子テツヤ
【黒子】の兎。【兎狩り】を受けたがその身の小ささや影の薄さで喰われることを免れる。逃げていた氷室に拾われ、笠松の指揮下へ。氷室のことを兄のように慕う。思った事は口にする性分は兎でも変わらず、相手がいくら自分より大きくたって物怖じしない。
【黒子】は全体的に体の作りが元から小さく影が薄い。個体数が少なくとても貴重な種。その味は群を抜くほどに格別に美味。肉は柔らかく甘みがあり、貴重であるために巣を見つけられたら乱獲されることもしばしば。常に命の危険に晒されている。かつては【帝光地区】に多く見られたが今ではほとんど見られない。発情期はまだ訪れたことが無いためどれだけの匂いを放つのか笠松達が警戒している。

火神大我
【火神】の狼。負傷しているところを偶然にも氷室と黒子に拾われる。治療に氷室が当たったので彼のことを兄のように慕っている。狼にしては類を見ない大食漢だが兎に対しての食欲はない。なので兎達と一緒になって木の実などを食べる。温厚で面倒見がよいので氷室が留守の時などに黒子の相手になっている。
【火神】はずっと昔に滅んだと噂されている狼の種族。火神以外の【火神】の狼の目撃情報はない。古い書物によると【誠凛地区】にいたことが書かれてある。狩りはあまり行わず、草食動物と同じものを食す生活をしていたと思われる。【キセキ】に並ぶほどの実力、体格を持っている。森の動物たちが仲良く暮らせることを願っていた狼は【火神】だけだったと言う。



笠松幸男
【笠松】の兎にして現在とある範囲の兎を総括する長の役割を果たしている。責任感が強く正義に溢れる。仲間を何よりも大事にしており、仲間の為なら命も惜しまない。
【笠松】は兎の中で極少数の戦闘派の部類に分けられ、実力のある者は狼とも戦えるほどの能力を持つ。鍛えられた肉は弾力も良く最高の歯ごたえがあり、病みつきになってしまうという。ただし抗う力も強いので、スリルを楽しむ一部の狼に好まれる。【笠松】は【海常地区】に多く見られる。発情期の症状は波があるが総合的に見ると重い。

黄瀬涼太
【キセキ】の狼。もともとは群れを外れていた一匹狼だったが、青峰の狩りに憧れて赤司の指揮下へ。【キセキ】や狼の中では最も雌狼に好まれる。元は【海常地区】の狼。
獲物を捕えるまでの間のスリルを好んでいるが自分の実力の方が勝ってしまい、狩りを退屈なものだと思っていたところで笠松と出会う。兎だと侮っていたら返り討にあい、狩りに楽しさを思い出すことが出来た。スリルを味わうためにちょくちょく笠松に会いに行くが、その度に返り討にあって傷だらけで帰ってくるので周りからは性癖を心配されている。



桜井良
【桜井】の兎。【兎狩り】に遭い、老いた兎と共に逃げようとしたところを笠松に助けられて指揮下へ。器用で、主に家事を担当する。心優しく気配りが出来るので笠松のサポートに回ることも。
【桜井】は臆病で警戒心が強い。が、一度心を許せばすぐに懐き、尽くしてくれる優しい性分。だがその優しさが仇となり狼に絆されて喰われることも多々ある。そのため長年の経験から狼に対しての警戒心はどの動物達よりも強い。薬草を好んで食すこともあり、その肉からは爽やかなハーブの香りが調味料となって一層狼達の食欲を引き立たせる。【桐皇地区】に多く見られる種だが、狼に隠れるような生活を送っていたよう。発情期の症状は軽い方だが、無意識に相手を誘ってしまう。

青峰大輝
【キセキ】の狼。狼達の中でも好戦的で荒くれ者として名を知らしめている。偶然狩りに居合わせた赤司に見初められ、ある条件の下で赤司の指揮下へ。欲に忠実で後先考え無しに行動する。が、何かとうまい具合にこなしてしまうのは運がいいのか、野生の勘なのか。狙った獲物は逃がさない、驚異的な狩猟率を誇る青峰に惚れて子分になりたがる狼も多い。そのこともあり、狼達の中で一目置かれている。元は気性の荒さで有名な【桐皇地区】の狼。
狩り以外で森へ出ない青峰だが赤司の命令で渋々出かけた先で桜井と出会う。食事を済ませた時だったので食べるつもりはなかったが、桜井の怯え様に好奇心がくすぐられて以後桜井のことを気に入る。運がいいのか、青峰の空腹時には出会わない。



高尾和成
【高尾】の兎。【兎狩り】があった頃高尾は妹と共に薬草を摘みに行っており、全てが終わった頃に桜井を助けた笠松に出会い、妹を連れて指揮下へ。
【高尾】は研ぎ澄まされた桁外れの視力を持ち、いち早く周りの状況を把握できる。とにかく素早く、捕まえるにはそれなりの運動神経の持ち主でないと難しい。非常にフレンドリーであり、種族が異なっていても溶け込むのは早くお手の物。そのため森の中での情報伝達は全て高尾がすることになっている。血に特徴があり、他の兎と比べて濃厚。一舐めしただけで本能が引きずり出されてしまうほどの濃度であり、高尾の兎が食された後は一滴も血痕が残らないため奇麗な屍となる。【秀徳地区】に多く見られる。発情期の症状は心拍数に左右され、その間視力が低下したりと体に支障が出る。

緑間真太郎
【キセキ】の狼。狼だとしてもラッキーアイテムは忘れず、【キセキ】の中では変わり者。狩りは食事。それ以上も以下でもないと割り切っている。手っ取り早く終わらそうと思うため、狩りのスペシャリストと言っても過言ではない。元は頭脳派の【秀徳地区】の狼。
一人でいることを好み、森の中でうたた寝をしているところを高尾にちょっかいをかけられる。肉食動物とコミュニケーションをとるなんて兎の中でも変わり者だ、と獲物としてではなく高尾に興味を持ち始める。



氷室辰也
【氷室】の兎。【兎狩り】に遭い両親に逃がされた【氷室】唯一の生き残り。逃げる途中で黒子を拾って負傷、その後桜井に治療を受けて笠松の指揮下へ。
【氷室】は兎の中では随一の美貌を持ち、男女とも美形。肉は薄いものの黒子とは違う甘みを持っている。食用として喰う狼もいればその美貌を買ってあえて喰わずその体を堪能する狼もいる。後者目当ての狼は雄が多く、またその被害も多い。【陽泉地区】の外れに多く見られた。発情期の症状は重く、熱に翻弄されやすいため兎の中では重度の危険度を持つ。そのため発情期は巣はおろか部屋から出ることさえ許可されない。

紫原敦
【キセキ】の狼。キセキの中ではグルメな部類だが、基本何か口にしていないと落ち着かない性分で狼が食べないような木の実などを齧っているのが日常。そのせいで兎に食料の供給がおろそかになっていることも知らずに。元は【陽泉地区】にいたが美味しい匂いにつられて【帝光地区】へ。
美味しそうな匂いにつられて花畑に出たところで黒子と氷室に出会う。空腹でなかったからか、氷室のあしらい方が上手かったのかは定かではないが、そこで狩りが行われることはなかった。この出会いから氷室に興味を持ち始める。獲物としてか、一匹の動物としてかは彼にしかわからない。



降旗光樹
【降旗】の兎。高尾と同じで直接的には【兎狩り】に遭っていない。が、仲間が目の前で狼に喰われた場面を見てトラウマ化し、狼に対して並々ならぬ恐怖心を持つ。元は【誠凛地区】に住んでいたが、【兎狩り】後に【帝光地区】に移住してきた。そこで悲惨さを目で見て実感した降旗は力になれないかと笠松の元へと向かい、後に共に住むことに。
【降旗】は一見普通の兎と区別は付かないがその味は格別。聴覚が優れており、その敏感な耳が同時に弱点にもなる。【誠凛地区】で何種かの兎に混ざって暮らす。発情期の症状は熱に浮かされて体の自由が利きにくくなるという不自由なもの。

赤司征十郎
【キセキ】の狼にして一部を除いた全狼を統べる長。数多の狼を束ねる王座に座る赤司の実力は計り知れない。体格も他の狼より小柄であるのに、彼を認めない狼は一匹たりともいない。過去に兎の側についた【火神】を壊滅させたことがある。「喰う者と喰われる者は相容れることはない」。そう断言して。生物世界の常識は決して覆すことは出来ない。食物連鎖は不変の真理。基本的な考え方は緑間と同じ。【洛山地区】を統一後、【帝光地区】を拠点に各地区から有望な狼を集めて全地区の狼を統べようとする。
紫原が氷室に興味を持ち始めたことを知った赤司は黄瀬などの他の【キセキ】も同じように特定の兎に一目していることに興味を持ち、無防備に出歩いていた降旗を捕える。怯えるが、芯を持った降旗に興味本位で捕まえたはずなのに無意識に惹かれていく。









息を切らして月の明かりを頼りに森を抜ける。背後から漂う生臭い吐息と揶揄の笑声に恐怖を覚えながら必死に足を動かした。背におぶる幼子をあやす余裕など持ち合わせてはいない。ただひたすらに奴らから逃げようと、一瞬でも長く生きようと走り続けた。



――――――…食物連鎖をご存知だろうか。

地球上の生命体は食物連鎖からは決して逃げることはできない。それは自らもがその中に組み込まれているからだ。肉食動物は草食動物の気持ちを考えたことがあるだろうか、いや、それはない。何故か?彼らは捕食、狩りをゲームだと思っているからだ。自分以外の命など目もくれない。利己的、自分勝手にいたずらに無防備なオレ達に牙を立てて喰らうんだ。
――――…何が嬉しくてこんな体に生まれたのか。そんなの誰も望んじゃいない。せめてもっと普通の、普通の体として生まれていたかった。
兎として生まれたことが嫌なわけじゃない。周りの兎とは異質で特殊な、まるで食べられ消化されることが宿命だと告げられているような、そんな体に生まれてしまったことが悔やまれる。
野獣の好む匂いを放つのか、狙われることは頻繁にあった。あの夜、追い詰められた時に聞いた言葉で鮮明に覚えているものがある。

『お前の種族は特別キレイな奴が多かったな。男でも女でも。…んで、すげー甘くてなァ』

オレが生まれ育った【氷室】の巣に野獣が強襲をかけてきたのは皆が一番気の緩んでいる深夜だった。無防備だったオレ達は瞬く間に襲われ、その大半が呆気なく喰われた。オレは両親に「お前だけは生きてくれ」と死に物狂いで逃がされた。悲痛な悲鳴が耳をつんざき、ぱっと散る赤に狂気を感じたオレは両親の思いを受け取って振り向かずに走って巣から逃げ出した。巣で何不自由なく安全な暮らしをしていて森へ出たことのないオレは彷徨い走る中で、偶然オレ達と同じ兎の小さな巣を見つけた。通りかかった【黒子】の巣も同じようなことになっていて、既に後の祭りと化していた。誰か生き残りはいないかと見渡していると小さな幼子がぼろぼろのクローゼットの陰でうずくまっていたのを見つけた。すすり泣く幼子の足元には両親と思しき残骸が転がっていた。咽返るような血の匂いに吐き気を及ぼしながらも幼子の涙を拭い、語りかけた。

『一緒に逃げよう』
『ここにいたら君も食べられてしまう』
『奴らはボク達を食べ尽くす気だ』

オレは大粒の涙を零す幼子をおぶって、【黒子】の巣を出た。行く先なんてない。あてもない。奴らから逃げることが先決だった。
が、野獣はオレ達を喰らい尽くすつもりでいたらしく追手にオレ達の姿を捉えられてしまい、死に物狂いで森の中を走った。頭には“生きたい”と。それだけを焼きつけて。恐怖に当てられた幼子は背中でしゃくりあげている。それを揶揄する野獣共は必死で走っているこちらとは打って変わって余裕綽々といった様子でオレ達の周りを跳ねまわる。視界はとっくに歪んでいて何も見えなかった。けど捕食されて死ぬなんてまっぴらごめんだ。同じ兎の生き残りも見つけた。この子と一緒に生きるんだ。そう足を進めた時、ガクンと浮遊感が体を包んだ。重力に従って下降する体にようやく崖から落ちたのだと気付いた。

『【氷室】の生き残りが、最後はあっけなかったな』
『なぁ、死骸もうまいのかな』
『当たり前だろ。フツーの兎とは違うんだよ』

そんな声を遠くに聞きながら、オレはせめてこの子だけは、と背の幼子を腕に包み、重力に従い落ちていく中で静かに目を瞑った。








気付いた時にはベッドにいた。見慣れない天井、そして体と左目に走る激痛が覚醒をもたらした。

「……ぐっ、」

崖から落ちた時に傷つけたか、ああ、でも生きている。それを実感した。残る右目で自分の状況を確認する。体中に施された手当の数々、包帯で巻かれた箇所からはじわりと赤黒い血が痛々しく滲んでいた。筋肉一つ動かそうとすれば途端にずきりと鋭い痛みが顔を歪ませた。
――――…肋骨が何本かいった。それに左目も…見えない。手足は折れてないものの打撲がひどい。

「目が覚めましたか…?」

開け放たれたの扉から顔を出したのは、オレと同じ兎だった。あれは確か、【桜井】の。淡い桃色の垂れ下がった耳が潤んだ瞳を半分隠す。多分彼がオレを治療してくれたのだろう。痛みに耐えながら同じ兎に向かって笑むと、桜井の兎は警戒心を解いたのか、両手で盆――薬草の煮詰めたような香りがする器を乗せた――を抱えたまま部屋に入ってきた。

「君が治療をしてくれたのか、ありがとう」
「はっ、はい、応急処置ですみません!ちゃんとした医師が…その……いなくて…!」

ぺこぺこと頭を下げるその所作は何とも【桜井】を表していた。桜井の兎は他の種族よりも臆病だ。けれども警戒心は最初だけで、心を許すのも早い。
彼が言葉尻を弱めたのは、彼の腕に巻かれた包帯に関係があるように見えた。頬にも擦りキズがあるところを見るとやはり、彼の巣も―――…

「オレを助けてくれたのは、君かい」
「いえ、僕じゃなくて、幸男さんです、あっ!ゆ、幸男さんは僕のことも助けてくれたんです、狼の襲撃から…」

話を聞けば【桜井】の巣も【氷室】とほぼ同じ刻に狼の襲撃に遭い、死ぬ思いで逃げ出してきたらしい。けれど【桜井】の巣の被害は【氷室】や【黒子】ほどではなかった。もともとの性格が幸いしたのか、周りの異変には敏感だった。老いた兎を逃がそうと、狼から逃げ遅れた彼を助けたのが、幸男――…笠松の兎。【笠松】は兎の中で唯一の戦闘派で主に他の兎の巣の警備など全体の状況判断を任されている。兎に寄れば狼にも太刀打ち出来る強者もいるという話を耳にしたことがある。当時笠松の兎が察知した危機を高尾の兎が伝達するという流れだったらしいが、何らかのトラブルに見舞われてそれは叶うことはなかった。

「そう…オレのところもね、悲惨なものだったよ。……後で笠松さんに会えるよう取り計らってくれるかな」
「そうしたいのは山々なんですが、幸男さん、今はその…手が離せなくて…すみません!すみません!」
「わかった。オレに何かできることがあったら言ってくれ」
「でも…あなたは負傷した兎の中でも重傷です…!まだ休んでいてください!」

名前を聞きそびれた桜井の兎は傷に良いという薬膳スープを置いて他の兎の治療へと向かった。
冷静な頭で考えてみると、この時期は狼の繁殖時期ではないだろうか。そう考えると狼の強襲に負傷した兎は数知れず。時に兎は狼の繁殖の際に兎が好まれて捕食されることを【兎狩り】と呼ぶ。【兎狩り】は何度かあったが、近年はこんなに大規模ではなかったはずだ。一体何があったのかと、恐怖を感じて背筋が凍る。あの場で殺されていたら―――…そう考えるだけでじわじわと体温が下がっていくのを感じた。
置いていった薬膳スープを口に運び、その温かさが冷え切った芯が温まる感覚に瞳を閉じた。





「さすがキセキの世代ってとこっすか」
「………だな」

兎達が負った深手は予想の範疇を遥かに超えていた。狼の繁殖期は解析済みだったというのになぜ防げなかったのか。反省する点は多々あるものの、この付近一体の兎の量は激減した。この場所で確認できる兎の数は【笠松】、【桜井】の兎が少々と次に【高尾】が二匹、そして【氷室】、【黒子】の兎が一匹ずつ。しかも黒子に至ってはまだ幼い。
【黒子】は他の種族よりも体が小さい体格が特徴的だ。それを考慮しても些か小さすぎた。あどけなく見える丸い瞳は何も知らなさそうでいて全てを見透かしているような、色素の薄い水色が窺える。
氷室が負った傷を癒すため、今は高尾に面倒を見てもらってはいるが、気を抜くことはできない。狼達がいつ、この臨時で作った巣を見つけて乗り込んでくるか予断は許されない状況下にあった。

「なぁ、幸男サン」
「なんだ」

氷室と離れ離れになって落ち着かなかった黒子をようやく寝付かせた高尾は生い茂った草の隙間から外の様子を窺う笠松の兎に小声でささやく。

「…キセキの奴らがこの地に来たのって、マジだったんすね」
「ああ。今回の繁殖期は奴らに盛った雌が原因で、子を産むための狩りが祭化して雄も便乗した、ところだろう」
「今生きてるのが不思議っすよ。オレ」
「オレもだ」

助けた時も、狼の様子を見た時正直恐怖を感じて足が震えた。けれどオレがやらないで誰がやる。意を決して狼に立ち向かった。しかし救助できた兎は幸か不幸か特殊すぎる兎ばかりだった。他にも【笠松】の仲間達は各地に散らばって、きっとオレのように助けた兎と共にいることだろう。
けれどこちらはわけが違う。普通の兎ならばまだ良い。何倍も。自分も含め狼達の格好の餌となる種族が5つもいるのだから。その甘美なる匂いは、狼達にはどのように香るのか知ったものではない。できるだけ遠く、できるだけ深い場所、匂いや気配を察知されない場所に巣を作らなければ。今のオレにできることは、皆をまとめて指揮することだ。

「一年だ」
「へ?」
「一年で復旧する。オレ達が普通に住めるような巣を、作るぞ」
「……そっすね、作りましょ!」

過去ばかり見ても何も変わらない。そう言った高尾は涙で腫らした目元を隠すように不器用な笑顔を浮かべる。同族を奪われた悲しみはまだ癒えないが、それ以上にこの状況を元通りにするべく、残った兎達がより結託して良い未来を築いていかないといけない。その土台を作るのは、オレ達だ。ぐっと握った拳は憤怒や悲哀を超えた、決意を示していた。
――――…降旗の兎が「オレにも何かできること、させてください!」と申し出てくるのは、今から少し先の話になる。






個人的書きたいなーと思うシチュ(※書けるかどうかは不明)

■とにかく発情期…!!
□黒子が初めて発情期に入り、火神が慌てる。二人しかいない状況で、どうしていいかわからない。けれど黒子を少しでも楽にさせたくて、何もかも手探りの状態で行動して見るが―――…
「かがみく、ぼく、じぶんじゃなくなっちゃう、きがして」
「たすけて、たすけてかがみくん、こわい、」

□巣を出るつもりはなかった。けれど巣の前で楽しそうに待つ黄瀬が放っておけなくて。いつも通りに黄瀬が笠松にちょっかいをかけるのだが、異変に気付く。気付かれたくなかった笠松はその場から逃げようとするが、長い腕に捕まえられて―――…
「何で逃げるんスか笠松さん、ねぇってば」
「…ッ、触んな!くそ、なんでこんな時に…っ」

□青峰の空腹時に出会ってしまった桜井。突如襲う発情期の兆候。目の前の獣は嗤う。乱暴な腕が桜井を捕え、桜井の瞳から涙が零れる。それを見て我に返った青峰は―――…
「良さー、ホント美味そうだよな。あー、オレなんで手ェ出さなかったんだろ」
「え、あ、青峰さ、っや――――…」

□血塗れの高尾、周りには数匹の狼。約束の時間に初めて出会った場所で緑間が見た光景はあまりにも痛々しい高尾の姿だった。憤った緑間は普段見せないような表情で狼を蹴散らした後高尾の治療を始めるが、緑間が空腹だと気付いた高尾は―――…
「ね、真ちゃん。オレ、真ちゃんになら食べられてもいいかなって、思ってんだけど」
「オレさ、痛いの嫌いなんだよな、…だからさ真ちゃん、楽にさせてよ。その牙でさ、オレの息の根、とめてよ」

□症状が重い氷室の為に黒子が薬草を摘みに行くが、高尾が近くに狼がいると警告。黒子の身を案じた氷室は形振り構わず巣を飛び出し、その先で紫原と出くわして―――…
「ア、ツシ……、なんで、い…いやだ、やめろ、やめてくれ」
「あーもーうるさいな、言ったでしょ?食べちゃうって。………おとなしくしてなよ、耳障りなんだから」

□赤司の下で監禁されていた降旗が何の兆候も無しに発情期に入り、絶対絶命のピンチ。危険を感じた降旗は近づく赤司に怯え泣き叫ぶ。降旗の尋常ではない怯え方に、赤司がとった行動とは―――…
「いっ、いやだ、おおかみはいやだ、こないで…ッ、こないでッ!いやだぁぁあッ!」
「―――――…光樹、」




オオカミなキセキと兎な相棒組の話


( オオカミキセキと兎組 )


支部にあげていた物。ちょっと書き方違うのはそのせいです。
20121225 ナヅキ
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