Chito×Kura


2011.10.31〜2011.12.31 フリー配布




「白石、その格好なんね」
「何って、魔女やん」

平然と言ってのける白石は現在、全身の映る鏡でポーズをとっている。その姿は黒い三角帽を被り、木製の杖を持つ、魔女だ。所々擦り切れていてそれっぽい雰囲気の黒のワンピース。足元まである長いマント。足元には先の尖ったブーツを履いて、完成らしい。この際何故魔“女”なのか追及するのはやめておこう。
ワンピースの破れた隙間からは白石のおみ足がちらりと見え隠れしており、どうにも視線が離れない。コスプレが苦手だとか言う割にはノリノリの白石は口元に笑みを浮かべて鏡に映るもう一人の自分を見つめていた。

「我ながら完璧な着こなしや…絶頂……!」

恍惚な表情を浮かべて酔いしれる姿は到底テニスコートに降り立つ“聖書”と同一とは言い難い。だって、今の白石は、部室で俺と二人きりだから。

「せやろ?千歳」
「似合ってなくはなかね」
「何やソレ。はっきり言えや」

謙也と財前から散々文句を付けられ、俺達は男子更衣室から追放された。着替えから何から色気ダダ漏れの二人ということでだ。白石は納得できる。実際、男子更衣室を覗き見する女子もいるという話もあったりする。もちろん白石目当てだ。ただでさえ体育の着替えも同性から視線を浴びているというのに。こんな具合に問題があるから、ハロウィンパーティの着替えもすごいことになりかねないので別の場所で着替えろ、とまで言われたのだ。
そこで渡邊先生から部室の鍵を借りて仮装の着替えをしていた、というわけである。

「はっきり言ってもよか?」
「曖昧なのは嫌いや」
「やらしかね、足のところなんか特に」
「お前は本当にそういう目でしか見れんのか」
「白石が悪か」

笑顔で言うと一瞬軽蔑の眼差しを向けられたが俺の仮装姿を目に入れるや否や、大きな瞳をさらに見開いた。
俺に渡された衣装はオオカミ。女子達の手作りらしいが、毛の質感もなかなかだ。おまけに尻尾まで作ってくれた。制服のズボンから重力でぶら下がるそれは少々重い。

「…ようやってくれるわ」

「めっちゃ似合っとる」と小声で呟くも、どこか悔しげだ。自分の姿を確認してはいないが、白石が言うのだからそうだろう。

「千歳外に出すのもったいないな」
「じゃ、先にハロウィンパーティーするとね?」

「トリックオアトリートばいね」椅子から立ち上がってお菓子の詰まった籠を拾い上げる。と、白石は扉まで言ってその鍵を閉めた。不思議に思って白石、と呟くと、白石は振り返ってにこりと微笑んだ。

「なぁ千歳」
「なん?」
「トリックオアトリートの意味知っとるよな」
「お菓子くれんと悪戯するっちこつね」
「せや」

白石は俺の持つ籠を奪い取り、その中から一粒の飴玉を取り出した。籠は無造作に机に置かれた。もうお菓子の籠に白石の意識はない。飴玉を包んでいた紙を解くと、それは白石の魅力的な唇に運ばれた。

「やからこうもとれんねん」

細い腕が首の後ろに回され、足の間に白い腿が割り込む。長い睫毛が揺れて、上目遣いで俺を見上げて妖しげに笑う。

「イタズラせえへんと、飴ちゃんやらんで、ってな」

唇を割って侵入する熱い舌はほのかに苺の味がした。咥内の熱さに溶けた飴玉は白石の舌を伝って俺の咥内へと送り込まれる。
徐々に深くなっていく口付けに、俺はどちらのものかわからない苺味の唾液を残り僅かな理性と共に嚥下した。

(さすが、魔女ばい)




Witch


( Witch )


誘い受け白石…なんと言う俺得!飴ちゃんって言わせたかった。白石さん言ってることとやってること矛盾してますが気にしない方向でよろしくお願いします。うちの白石は大体何でもこなせます。仕事好きなんでね。

20111027 ナヅキ
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