ちょろいストーカー四男


「い、一松くん」
「……なに、ハルちゃん」
「離してくれないかな、腕…」
「やだ」
「い、いたいいたいいたい!いたいよ」
「やだ」
「ほんとにいたいんだよ」
「だって離したらおれから逃げてくんでしょ。そんでおれよりいい男みつけて、おれなんか忘れて結婚して、そんで…。まあ、底辺の上なんて吐いて捨てるほどいますけど」
「一松くん、わたし逃げないよ」
「ハルちゃんさ、嘘つくのヘタだね。こんなに足突っ張って、逃げることしか考えてないじゃん」
「だって、いたい」
「やだ、離さない。おれとこれからも一緒にいてハルちゃん。ねえハルちゃん」
「え、わたしたち付き合ってないよね?なんなら一松くんの名前もついさっき知ったよ」
「おれはずっと前からハルちゃんのこと知ってたよ。ずっと見てたから、なんでも知ってる」
「どうしよう」
「一緒にいて」
「離してくれたら、一松くんとのけんぜんなおつきあいを視野に入れることを考えています」
「!!」
「…(あ、光の早さで離れた)」
「それ、…ほ、ほんと?」
「…(ちょろい)」




[ 50/78 ]