今日は12月某日、雪が降る昼下がり。僕がひとりぼっちになって9年が過ぎた。
「久しぶり…父さん、母さん…アツヤ」
北ヶ峰の静寂しきった道路で僕は花束を握りしめた。
ここで9年前に事故に遭った。父さんと母さんとアツヤは死んで、僕は生き残った。投げ出された後、僕は雪に埋もれて歪な形になってしまった車を見て必死に雪を掘り返した。
自分の頭から血が流れていることなんて知らない
霜焼けになっているなんて知らない
独りは嫌だと泣き叫びながら、大好きだった雪をかきだしていく。
涙と血とでぐちゃぐちゃになった顔で僕は…
「吹雪…」
「うん?」
「その…大丈夫か?」
「…大丈夫…じゃ、ないかも」
豪炎寺君にもたれながら僕は真っ白な道路を見る。端から見たらじゃれ合ってるように見えるかもしれないけど、本当に足に力が入らないんだ。支えてもらわないと立っていられない。
「豪炎寺君…ごめん」
「謝るな」
「うん、ごめん…」
「……」
情けない、僕はあの時成長したはずなんだ。でも、やっぱり…
「僕は…まだ弱虫のままだ…一人ぼっちは…怖い」
「…吹雪、俺はお前を絶対に独りにしない」
「…保証は?」
「ない」
「ハッキリ言わないでよ」
ふふっと笑いが漏れると豪炎寺君も微笑んでくれた。そう、今が幸せなのかもしれない。
ちゃんと僕を理解してくれている人がいる
そばにいてくれる人がいる
愛してくれる人がいる
「僕は…幸せ者だなぁ…っ」
雪は降る
9年前のあの頃のように
まるで、砂時計のように時を刻みながら降り積もっていく
僕の時は雪に刻もう
過去も今も、そして未来も…