「…んー」

あ、寝癖が酷い…どうしたもんかなぁ…。僕は東京にあるホテルの洗面所でそんなことを思っていた。北海道にいるはずの僕が何故東京にいるのかというと…

「やっと君に…」




頬が緩みまくってニヤニヤがとまらない。だって明日やっと…会えるんだ。

「豪炎寺君…」












「うげぇ、豪炎寺…それブラック?」
「うげぇってなんだ、うげぇって」

ぷしっとプルタブを開けながら円堂とそんなやり取りをしていた。
円堂は自動販売機にもたれ、財布をいじりながら言う。

「俺はそんな苦いの飲めないなぁ…」
「コーヒー自体飲めないんだろう?」
「あ、バレた?」

はははっと軽く笑いながら円堂は硬貨を入れてホットレモンを選択。ピッと機械音が鳴ってすぐにガコンと音を立ててホットレモンが落ちてきた。

「珍しいな、お前がスポーツドリンクや炭酸以外のものを飲むなんて」
「ば、馬鹿にしてんのか?俺だってたまにはこういうの飲むぞ」

悪い悪いと謝りながら缶コーヒーに再び口をつける。温かいほろ苦さを味わいながら喉を通した。

「最近、寒くなってきたからさー温かい物が恋しくなるよなー」
「なるほど、だからホットレモンか…」
「そーゆーこと」

円堂はまだ自動販売機にもたれたままホットレモンを飲み干していく。たまにペットボトルの熱で自分の手をあたためているのを見ると、もう冬なのかと実感する。

「この冬越えたら俺達…もう高校生かぁ…」
「早いもんだな」
「そうだなー。俺、豪炎寺に出会ったのさ…すごく最近のことに思えるよ」
「俺もだ」

俺達は周りが暗くなるまで昔のことを話し続けた。一年前の雷門サッカー部のことについてや鬼道が仲間に加わった時のことなど…昔のことなのに、つい昨日の出来事だったかのように俺達は時間を忘れてずっと話していた。







「じゃーなー!豪炎寺ー!!」
「あぁ、またな」

思い出話はかなり長引き、いつの間にか7時半過ぎをまわっていて俺達は帰ることにした。

「(暗い…もう夜だな…)」

真っ暗闇の中、俺は自分の家に向かって足を進める。靴と地面が擦れる音だけが異様に大きく響いていた。

「あ…」

ふと空を見上げると夜空に無数の星が輝いていた。手を伸ばし、その無数の星を掴もうとしてみるが、やはり掴むことはできない。

「馬鹿か俺は…」

自分の行動に羞恥を抱き、早く帰ろうと早足で家に向かった…が、













「ご、…豪炎寺…君…?」


後ろから自分の名を呼ばれ、振り向いた瞬間、俺は自分の目を疑った。


「な、…」
「……」


カランと缶ジュースが落ちる音が静寂した道に響く。

「ふ、ふぶ…」
「っ!!」
「ちょ、吹雪?!」


北海道にいるはずの吹雪が何故こんなところに?というか、缶ジュース落としたまま吹雪は猛ダッシュで俺から逃げていく。俺は溜め息を一つ吐いて裏道へと回り込んだ。


「っ!!??」
「みつけた」
「な、なんっ…?!」
「この辺に住んでるんだぞ?俺…」
「うっ、」

しまったというような顔をした吹雪にさっき落としていった缶ジュースを渡した。

「あ、ありがとう…」
「で、なんで北海道にいるはずのお前が、こんなとこにいるんだ?」「えーと…テスト休み使って遊びにきてみたんだ…うん。明日君達に会って驚かそうと思ったんだけど…」

しどろもどろと説明してくれたが…おい。

「おい受験生」
「は、はい…」
「余裕だな。受かる自信あるのか?」
「わかりません…」

少し責めすぎたようだ。しゅんと小さくなってしまった吹雪の頭を撫でてみた。うん、ふわふわは健在のようだ。

「何さ…」
「いや、お疲れ様の意味を込めて…あと、」
「あと?」
「おかえり」

そう言った瞬間、カランと音を立てて再び缶ジュースが落ちたと同時に吹雪は俺に抱きついてきた。そして、笑顔で言ったんだ












「ただいま!!」





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