バスで送ってくれた後、僕はひたすら白恋中を目指した。雪はすっかり降り止んで、晴天だ。
『吹雪はサッカーするのか?』
あの質問が頭から離れない
僕はサッカーが嫌いだ。だからやらない、やめたんだ。アツヤがいなきゃやる意味なんてないだろ?だって、二人で完璧になるんだ…一人でも欠けたら完璧なんてただの夢でしかない。
それに、サッカーは僕から大切な物を全て奪った。神様はそんなに僕サッカーをしてほしくないのだろうか?
「あ、れ?君達は…」
学校に戻って教室に向かおうと廊下を歩いていたら荒谷さんに呼ばれてサッカー部の部室として使っている教室に行くと…いたんだ。
「あれ?!さっきの…『吹雪兄弟』ってお前なのか??」
「え…?」
ちらりと荒谷さんを見ると、気まずそうに目を逸らされた。他のみんなも同様に助けに入ってくれそうにない。
「はぁ…」
「なぁ、なぁ!!どうなんだ!?お前が『ブリザードの吹雪』なのか!?」
「え、ちょっとっ…」
「お前が伝説のストライカーなのか?!」
…ストライカー
僕は…アツヤ(ストライカー)じゃない。
ブリザードでもない
この人達が必要としているのは
アツヤの力…
「違うよ」
「え、」
「僕は吹雪だけど、兄弟なんていないよ。さっき言った通りサッカーだってやってないし…人違いなんじゃないのかい?」
「え…でも…」
「円堂、本人が違うって言ってるんだ。違うんじゃないのか?写真だってぶれてるから証拠にもならないしな」
「そうだよな…無駄足かぁ…」
ごめんね、アツヤじゃなくて
そして、アツヤ…ごめんね
君の存在を消してしまって。でもね、僕はね…
君の存在を誇る権利なんてないんだ。
本当、駄目な兄でごめん…
「じゃあ、お前の名前は?」
「え?」
「名前だよ!!吹雪なんて言うんだ?」
「僕は…吹雪
敦士だよ…」
やっぱり僕は最低な人間だと思った。