夏休みだ。
そう、待ちに待った夏休みだ!夏休みだ…夏休み…だ…











「あ゛ーーーーーーーづーーーーー」

こんな暑さ知らない。何なんだろう、関節裏から汗が流れ出ることなんて人生初めてだ。
北国育ちの僕にとって東京の夏の暑さは地獄のようなものだ。なにこれ、生き地獄ってやつじゃない?
東京在住者の皆さんはクーラーを入れればこの生き地獄から天国へと変わるのかもしれないけど、僕の家にはエアコン自体ない。…もう一度言おう、エアコンがない。

「…脱水症状起こしそう…」

窓を全開にした居間に寝っ転がってうちわでパタパタと扇いでいたりする。扇風機?扇風機は昨日お亡くなりになられた。
さっきまで、何回も冷蔵庫の開け閉めを繰り返していたがさすがに冷蔵しているものが暑さでやられてしまうと思い、冷蔵庫の冷風はあきらめた。








「………暑いなぁ…」

今日で何度目かの感想を口にした。無意識のうちに口から出ているから相当頭も暑さでやられたらしい。脳内でぶちんっていう音が聞こえたが気のせいだろう。うん、きっと気のせいだ。



「…アイス食べたいなぁ…氷食べたいなぁ…あ。」




いいこと思いついた


































『ーピンポーン…』

「?」

俺は何度も吹雪の部屋のチャイムを鳴らす。アパートだから聞こえてないってことはないはずだが…

今日は今期最高の気温らしいから暑さと格闘している吹雪に差し入れのアイスを持って来たが…

「なんの連絡もなしに来たのがまずかったか…?」

肝心の吹雪が出てこない。涼しいファミレスにでも避難したのだろうか?
不意にドアノブに手を掛けたらガチャンと音をたててドアが開いた。

「…不用心だな…」

鍵閉めろよ

とりあえず、お邪魔しますと小声で言い奥の部屋へと足を進めていった。

























「………」
「………」

「………」
「………」
「……何してるんだ?」
「…暑いから氷の楽園に逃避中」
「いや、いやいやいや」

こいつは偶にとんでもないことを考えて実行する。まさに今この時だ。

「豪炎寺くーん…君も入る?」
「いや、いい…遠慮しとく…」

今吹雪は冷凍室の中に顔だけを突っ込んでいる状態だ。…首食われてるように見えるぞ

「冷凍食品がだめになるぞ」
「大丈夫だよ。ご飯しか入れてないし」

ご飯だから大丈夫って訳ではないと思うんだが…


俺は軽くため息を吐いて、吹雪を冷凍室からログアウトさせる。じたばた暴れて抵抗するが、俺の力には叶うはずもなく不機嫌そうに眉間に皺を寄せ俺を睨みつけている。

「豪炎寺君…最っ低…」
「電気勿体無いだろ…」
「僕より電気の方が大事なんだ!?」
「何故そうなる」

暑さで吹雪の頭はイっているらしく、珍しく反抗的だ。そして、意味がわからない

しょうがない、最終手段だ…


「せっかく、暑さと戦ってる吹雪にと…アイスを差し入れで持ってきてやったのにな…」
「あいす…!?」

反応したな

「でも、お前は俺が持ってきたアイスより冷凍室にいるほうがいいんだよな?」
「ぇ…え、うぅ…」

よし、もう少しだ

「じゃあ、俺は帰るな。そうだな、ファミレスにでも行って涼みに行こう」

吹雪に聞こえるくらいのボリュームで呟きながら玄関へ向かう。さて、どうする吹雪…












「あぅ…うぅー…豪炎寺君、ごめんなさい…」

予想通り、吹雪は折れた。









夏休みのとある日

















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