日直だった俺は日誌を書くために夕日に照らされた教室の中にいた。
勿論、俺一人だけだ。他の生徒は部活やら家やらに帰ってしまった。
「よしっ…」
やっとの思いで無駄に行数の多い日直のコメント欄を埋め終わる。埋めないと再提出、下手したら明日も日直の仕事をするはめになってしまう。それだけは嫌だ。
「…………」
ふと目が窓の外にいった。
サッカー部がグラウンドで広々と練習しているのが丸見えだ。
「……ここから見たらこんな風に見えるんだな」
円堂の叫ぶ声が聞こえ、頬が緩んでしまう。あいつは本当に面白い奴だな。
戸締まりを済ませて教室を出ようとしたときに、最後の仕事を思い出した。
「ここ、書きかえなきゃな…」
黒板の左隅っこにある日直の欄。そこを明日の日直に書き換えることも日直の仕事だ。
「えーと…明日は……俺の次の出席番号だから、……佐藤か」
新たな日直を書くために「豪炎寺修也」という字を消そうとする。
「…………」
しかし、俺は消さなかった。寧ろ、その隣に佐藤ではない人物の名前を書いた。
「吹雪…」
俺は自分の名前の隣に北海道にいる恋人の名前を書いた。
なんとなく、達成感を感じそこらへんに置いてあったイスを引っ張り出して日直欄のとこに置いて座る。背もたれの方を前にして座った状態で黒板を眺める。
確か…最後に会ったのは数ヶ月も前だったはず…さすがの俺も恋しくなる
「吹雪…」
もう一度恋人の名前を呟いた。
しかし、その呟きは北海道にいるあいつには届く筈もなく薄暗くなってきた教室の中で消えたのだった。
オレンジ色の教室にて