「みなさーん!!今日は七夕なので、この短冊に願い事を書いてください!!」
「願い…事?」
今日は7月7日、世間では七夕の日だ。そういえば、古株さんが笹を運んできてたような…
「はい、吹雪さんの分です!」
「あ、ありがとう…」
反射的に音無さんから短冊を受け取ってしまったが…
「願い事…かぁ…」
無いわけではない。でも、なんというか…
「あ!そうだ。」
皆は何を書いたのだろう?ちょっと参考にしよう
「キャプテーン!!」
「お?なんだ?吹雪」
キャプテンは丁度短冊に願い事を書き終わったところだったようだ。これは都合がいい。
「キャプテンは願い事、何書いたの?」
「ん?俺か?俺はなぁっ」
バッと僕に短冊を突き出した。そして、キャプテンの願い事に目を通す。
「”何でも受け止められますように“?」
「あぁ!!俺、もっと特訓して皆のゴールを守らなきゃだからなっ!!」
にひゃっと笑いかけてくれるキャプテン。キャプテンは本当に微笑ましいなぁ…
「吹雪は何書いたんだ?」
「え?いや、僕はまだだよ」
「そうなのかー」
僕は何にしよう…?あるはずなのにこういう時に限って出てこない。
「うーーーーーん…」
あれからみんなの願い事を見て回ったけど(見せてくれない人も勿論いた)、僕の願い事はまだ決まらない。
「あ、豪炎寺君はどうだろう?」
彼はここには集まってないから願い事を見せてと頼んですらない。僕は踵を翻し、彼の部屋へと足を運んだ。
「豪炎寺くーん?いるー?」
彼の部屋に着いたらドアを数回ノック。部屋の主からの返答を待つ。
「…………………………?」
一向に返事がこない。寝ているのだろうか?
「ごーえんじくーん?開けるよー」
とりあえず、何の了承を受けずにドアを開ける。ドアを開けた瞬間、ぶわっと窓から吹き込んできたそよ風に頬を撫でられた。
「ごう…えんじ…くん?」
部屋の主は机でうつ伏せになって寝ていた。机には医学の内容であろう分厚い本が風によってパラパラとページをめくられている。
「難しそうな本なんて読んだら眠くなるよね…」
僕は無防備な彼に近づき、寝顔を観察。
「えいっえいえいっ」
「んー…ん」
僕は彼の頬に人差し指を添えて豪炎寺君の頬を堪能した。
「………あ」
いいこと思いついた!
_…夕方
「ふっ、吹雪!!」
ばんっと音を立てて豪炎寺君が僕の部屋にずかずかと入ってきた。
僕は豪炎寺君の部屋をした後、短冊に願い事を書き、笹に飾りつけて自室に戻った。そして、今は本を読んでいる。
「どうしたのー?豪炎寺君」
「どうしたじゃない!!なんだあの短冊は!!」
「え?僕の願い事だけど…?」
「あんなこと、書くな!誰かに見られたらどうするんだ!?
あ、相合い傘なんて!!」
「いいじゃないか、普通に書くよりも叶いそうじゃない?」
「………」
そう、僕はあの後短冊に相合い傘を書いた
。傘の頂点にハートを書いて傘の下には名前を並べた。僕の名前『吹雪士郎』と彼の名前『豪炎寺修也』。
「バレるだろ…みんなに」
「いいじゃないか、寧ろ見せつけようよ」
豪炎寺ははぁっと溜め息をつき、ポケットからペンを取り出したかと思えば短冊に何かを書き始めた。
「豪炎寺…君?」
「……よし」
なんか、嫌な予感しかしないんだけど…
「ご、豪炎寺…くん?なに、書いたの…?」
彼は一際にやりっと笑い、僕に短冊を見せてくれた。
「なっ!?豪炎寺君!?」
「仕返しだ。俺もこのぐらい書かないとな」
「そ、それは駄目!!本当に駄目!!」
彼から短冊を奪おうとするが、ひらりとかわされる。
「さて、飾りに行こうかな。吹雪が椅子に乗っても届かないような笹の天辺に」
「うっ…!!ご、豪炎寺君の意地悪っ…!!」
そして、彼は僕の部屋を出て行く。ま、まだ間に合う!!スピードでは僕の方が有利だ!!
そして僕は彼の短冊を没収するために部屋を出た。
願いよ天まで届け!