様々な色の電灯が俺の下を行き交う
殆どが黄色だか、赤もあればオレンジもある。歩道橋の手すりに手を置いて光達の移動を眺めていた
河川敷をあとにしたあと、俺は無意識に大通りにでていた。他の人からはただの通勤・通学のために使用する道路だが、俺にとっては違う
「夕香…」
ここは、夕香が事故に遭った場所だからだ
「俺は…お前を殺してしまった…」
俺がサッカーをしていなければ
おまえの小さな命が消えることはなかったはずだ
怖かっただろう
痛かっただろう
苦しかっただろう
たった一人の妹さえ守れなかったんだ
だから、俺は…
「サッカーをやめ『それでいいのか?』
耳元で冷たい何かが聞こえた
「?…気のせいか?」
振り返っても誰もいない
空耳かと思い、流そうとした刹那
『お前はそれで本当にいいのか?』
今度はハッキリ聞こえた
「…誰だ?」
『さぁな。で、お前はそれでいいのか?』
俺の質問は眼中ないらしい
「なんのことだ?」
『とぼけんな』
いったいこの声はどこから聞こえてくるのだろう。まわりを見渡しても、この歩道橋には俺以外の人影はない
『サッカー…やめんじゃねぇよ』
「お前もか…何故皆して俺にサッカーを求めるんだ?」
『は?そんなの当たり前だろ?
みんな、お前のサッカーが好きだからだ』
「は?」
『お前にサッカーを求めた奴らはみんなお前のサッカーが好きなんだよ。ま、俺は見たことねぇからわかんねぇけど』
俺のサッカーが…?
『お前は弱い奴だな。サッカーをやめたらいつか妹が生き返り、母さんは目覚める…なんて思ってんじゃねーのか?』
「…っそんなこと」
『嘘だね。罪を償うなんて格好いいこと言いやがって…現実から目を背けてるだけじゃねーか!!』
「違う!!俺は…っ!!」
俺だけが…二人を忘れてサッカーを楽しんだらいけないんだ!!
プライドとかそんなものどうでもいい
ただ、俺は…!!
『お前の妹…お前のサッカーが好きだったんじゃないのか?』
「…っ」
『お前のサッカーを求めてたんじゃないのか?』
「夕香は…っ」
違う…違う!!
『今、一番求めているのはお前の心の底からサッカーを楽しんでいる顔じゃないのか?』
頭の中がすっと軽くなった気がした
視界が広がり、明るくなる
「………」
『天国にいる妹に安心させてやれよ。死人にとって、大切な人の幸せはそっくりそのまま自分の幸せにもなるんだからさ』
「俺は…」
『何迷ってんだよ。自分の気持ちに正直になれ!それが、お前の答えと同時にお前の妹の答えだ!』
「俺は…
サッカーを…やりたい…」
これでいいのだろうか?
夕香は本当に恨んだりしないのだろうか?
『お兄ちゃん、がんばってね!!』
「夕香…!?」
気がつくと、俺は歩道橋に身を乗り出していた
あの出来事が夢なのか現実なのかはわからないが、胸の中のもやもやした黒い何かが完全に消えていたのは確信できた