「んっ…」

生温い風が頬を撫でた
その瞬間、自分が目を閉じていることに気がついた。

「あ、れ…?」

ゆっくり目を開けると僕はベッドの上で横になっていた。ベッドのすぐ側にある窓が全開になっていて、カーテンが風によってひらひらと踊らされている。

「僕…いつのまに寝ちゃったんだろう…?」

確か、明後日はイタリア戦…あ、そっか。今日は気温と湿度が異常に高いから練習は夕方からなんだっけ?

「んー…」

ダルい身体を起こす気もならずに寝返りをうったら目の前に青い壁が現れた。

「…………っ!!!???」

突然の違和感に完全に覚醒してしまった僕は混乱に陥る。

『え、何?!というか、だれ?!』

そして、この青がジャージの一部分だと分かると僕は視線を上へと向けた。







「…っご」



豪炎寺君だった






豪炎寺君もすーすーと寝息を立てて寝ていた。こんな無防備な彼を見たのは初めてかもしれない。



豪炎寺君って…こんなに綺麗な顔してたっけ…?




そういえば、彼の顔を間近でこんなに長い時間見たのは初めてかもしれない。しかも、無防備な寝顔…いつもの豪炎寺君には見られない顔だ。


「ごーえんじくーん…」


名前を呼んでも起きる気配はない。
そっと彼の頬に手を置いてみた。



『あったかい…』


自分の体温と違い、優しい温もりを感じた。

僕は彼に触れているんだなと再認識させられる。



「…………」







「やっと…触れれた…」

ふと無意識に出た言葉だった。僕は言葉を発した瞬間、口を抑えた。



え、…今なんて…?
『触れれた』?どこの変態だよ…!!




「………」
「………」


幸い、豪炎寺君は起きなかった。相変わらず寝息をたてて僕の隣で寝ている。








「ん……」
「わぁっ!?ちょ、豪炎寺君!?」

いきなり豪炎寺君は僕にしがみついてきた。腰に手を回され、ぐっと引き寄せられた。僕はすっぽりと豪炎寺君の胸の中に収められた。あ、暑い…

「豪炎寺君…?」
「と…わ…に………ぃ…す」
「??」

何かぼそぼそと寝言を言ってるみたいだけど、小声でちっとも聞こえない。




「んん……」
「ふぁっ!?ちょっ…くすぐったいよ…!!」

次は僕の髪に顔を埋めた。頭に降りかかる吐息がくすぐったい。

「豪炎寺君!!」
「っ!!??」

びくんっと身体を跳ねてから起床。
本当に寝てたみたいだ…





「?……??」

むくりと身を起こし、焦点が合ってない目でゆっくりと回りを見渡す。僕は硬直したまんま豪炎寺君の様子を苦笑気味で観察。

「……どこ?ここ…俺の部屋じゃ…ない…」

完全に寝ぼけてる。僕が隣にいることを突っ込まない。

あれ?ていうか、なんで一緒に寝てたんだろう?


「んー…」
「わっ!?…ちょ、豪炎寺君!!」

考えることより眠気が勝ったらしく、僕の身体の上に覆い被さってきた豪炎寺君。首筋に顔を埋められ、耳にかかる吐息がくすぐったい。


「ん、んん!!ふぅ…」
「ふぶき…」

いつもの鋭くて優しい声と違う、誰かに甘えるような甘ったるい声…そんな声を耳元で出されたら…

「み、耳っ…ぁ」
「やっと…会えたな」

ふにゃっと微笑む彼。

え、今…なんて…?




「ご、豪炎寺君…?」
「お前が覚えてなくても…俺は覚えてる…ふぶき…」

何を言ってるかさっぱりなのに…何故だか違和感を感じる…心当たりがあるような…


「ご、うえんじ…くん…?」
「…何泣いてるんだよ…」
「ぇ…ぁ…」

僕の目からはポロポロと涙がこぼれ落ちていた。頬に筋を残してベッドにポタポタと落ちていく。

布に染み込んでいった涙を見つめていると、さっきまで見ていた夢であろうの映像が僕の頭の中を駆け巡る。


あれは本当に夢だったのだろうか…?





「僕…君に会う…夢を見た気がする」
「……」
「夢の中の君と僕は敵同士で触れることもできなかったんだ」
「…あぁ」
「夢の中の僕も完璧を目指していた。でも、完璧にはなれなかった。僕はお払い箱になって消えることになった」
「……」
「でも、君が守ってくれた」
「……」

豪炎寺君の顔が歪む

「ありがとう…本当にありがとう。また君に会えて僕は…世界で一番の幸せ者だね!」



また巡り会えたんだ

60億分の1の確率で

炎と氷は人間となって、自由を手に入れた





「今度は…大丈夫なんだよな…?」
「大丈夫だよ…僕らはもう人間だ。お互い消えたりしないよ…」






そして、僕達は溶けるような口付けをした 



















時を越えた再会






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