あの事故から数日経った
僕は頭がぐちゃぐちゃになって、精神状態が不安定になったから強制入院させられた。
もう、何も考えられなかった
思い出すのは血だまりの中少女を抱いて横たわるアツヤ
光のない瞳
真っ白なマフラーが血を吸って赤く染まっていく
「アツヤ…」
『士郎…』
僕の中でアツヤが誕生した瞬間だった
数週間で退院した僕はいつの間にか、見知らぬ親戚に預けられていた。『今までは二人で何とかなっていたが、今はもう一人だから心配』とのことらしい。
親戚の人は最初は優しく接してくれたものの、今では欲望丸出しだ。僕の家の中を漁って金目の物を探す。通帳がなかなか見つからないからよく僕を殴る
世間では虐待の部類に入るらしいけど、今の僕にはどうでもいい。
もう、どうでもいいんだ…
僕には後悔しか残ってなかった
自分の中で生み出したアツヤの存在なんてどうでもよかった。
『士郎…大丈夫か?警察に通報しろよ…そしたら』
「うるさいな。黙れよ」
『士郎…じゃあ、サッカーしようぜ!!気晴らしにぐらいなるだろ?』
「やらない。やりたくない。アツヤがいなきゃ完璧になれないのにやる意味なんてあるの?」
『俺ならここに…』
「違う!!!!」
そうだよ
僕らがサッカーしてたからこんなことになったんだ
サッカーしてなければお父さんとお母さんが雪崩で死ぬこともなかった
サッカーをしてなければアツヤが
死ぬこともなかったんだ
「あ、はははは…サッカーなんてやめた。やめたやめた。僕がサッカーを楽しむ分だけ大切な物が奪われていくんだ!!あは…あはははははハハはハハハハハハハはははは!!!!!」
そして僕はサッカーボールを投げ捨てた