「結構早かったな」
「まぁ、上の階だけ異常にダミーの数が多ければ誰だって予想はするだろう」

此処は氷の宮殿の最上階。
俺とガゼルは隠れん坊を始めたが…見つかったらしい。あと数分は時間を稼ぎたかったんだが…

「隠れん坊は終わりだ。私はお前を消す」
「悪いが、それは断る」

物凄い速さで突進してくるガゼルを避けると奴は氷で俺の足を凍らせた。

「…あんまり力は使いたくないんだが…」

俺は一瞬で足の氷を溶かした。

「…何故貴様はあの『氷』を助けようとする?あいつはもう、消滅しか道は残されていないのに」
「助けたいからに決まっているだろう?最後くらいは何も縛られることなく消えて欲しいんだ。あいつも…それを望んでいる」
「わからないな…自分の利益にならないことをするなんて…それは貴様にとって何の価値がある?」





俺にとっての価値?

価値なんてそんなもの必要ない

ただ…ただ











「俺はあいつの笑顔が見れれば…それでいい…」


あいつはいつも無表情だ

いつも、死んだ弟のことばかりを考えて

悩んで、苦しんで




挙げ句の果てには自分の力まで弱めるほどまで衰弱してしまった



「俺はあいつのためなら、この命は惜しくない」
「だったら、あいつのためと思って私に消されろ」




ガゼルは俺に向かって巨大な鋭利の氷を放つ

俺の胴体の真ん中に向かって近づいて…



























「残念だったな」
「?!」


鋭利の氷が俺の胴体を貫こうとした瞬間、俺は炎を自分の周りに出現させた。
そして、




「ガゼル、お前…いや、この国はお終いだ」
「何!?」
「何故なら…





















俺の中の全ての力を振り絞って、この宮殿ごとお前達の国を炎で溶かすからだ」





時間は稼いだ。あいつはもう、この国の中にはいないはず。なら、安心して力が出せる










「っ!!やめろ!!いいのか!?あいつに追いつくんじゃなかったのか!?」
「言っただろ?俺は












あいつのためならこの命は惜しくないって…」


















そう言った刹那、俺達がいた部屋は炎に包まれ、国丸ごと消滅した。













たとえ、この灯火が消えようと…



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