僕は夢を見ているのだろうか?
今日は僕の最後の日。
現在トップのガゼルという『氷』に取り込まれて消滅する
はずだった…
「な…んで…君が、ここに?」
「………」
目の前にいるのは紛れもなく『炎』の彼だった。
「誰だ貴様…『炎』の者が何故ここにいる?」
そう、ここは氷の宮殿。僕は今日、王様に呼ばれて消滅令を下された。別に驚くことじゃなかった。最初はトップだったのに今では最下位なんだ。トップまで上り詰めることは不可能だと判断して、王様は令を下したんだろう。
しかたがない事だと、僕も思う
納得してる
「な、にしに…来たの?」
「…お前を助けに来た」
なんで?なんで知ってるの?僕が消えるってこと…
「なんで…?僕はもう…生きる価値なんてない…力はもう、ガゼルって『氷』に吸収された…どうせ僕は消えるんだ…!助けたって意味ないよ…?」
「お前は自分の為に死にたくないのか?お前は人の為に利用されたいのか?」
「人の為に消えるって…喜ばしいことじゃないか…だって、僕はもう「何故、人を優先するんだ」
え…だって…
「お前、最後くらい我が儘になったらどうだ!?これがお前の望んだ死に方なのか!?ガゼルに取り込まれて消滅したらお前は幸せになれるのか!?」
「そ…なこと…」
僕は…自分の意志を優先させたことがなかった。
してはいけないと思ってた。
アツヤがいたから。
アツヤの我が儘を聞いてやるのが幸せなことだと思ってた。
でも…
「僕も…我が儘言って…いいの、かな?駄々こねても…いいのかな?…許されるの…かな?
僕は自分のために死にたいって思ってもいいのかなっ…?」
初めて我が儘を言った。
最初で最後の我が儘だ。
「当たり前だろ…!」
目からはポロポロと氷が落ちる。
「何を言っている。お前はもう、私に取り込まれなければならない定めなんだ。もう、『氷』でもないお前に拒否権なんてないだろう?」
「っ…でも、僕は…消えるなら、自分が望んだ消え方をしたいんだ!!
…我が儘だって分かってる…王様に逆らってることだって分かってる!!でもっ、
僕はっ…最後くらい幸せになりたいんだ!!!」
いい夢を見ながら眠りにつきたい
生まれ変わったら何になるんだろう?と胸を弾ませながら永眠したい
僕は…僕は!!
「わかった。お前の我が儘、聞いてやる」
「え?」
ぐしゃぐしゃになった顔を上げると、彼は綺麗に微笑んでいた
君なら叶えてくれそうだ
(そんな気がする…)