「ん………」

目を開けて最初に見たのが真っ白な天井。そして、寝慣れないベッドに横たわる感覚。その次に自分の服装。腕に何かついている。…何これ。

「………あぁ!!!」

勢いよく身体を起こし、もう一度服装を確認する。布団をずらすとひらひらのモノクロのスカートにスパッツを履いたままだ。ベットから下りて急いでカーテンを開けて時計を探した。時計は1時半を指そうとしていた。

「企画…どうなったの…?それに、僕、なんで無傷なんだろう?」

キャプテンの声が聞こえたのは覚えている。それから?身体は痛くない…ということは誰かを下敷きにして僕は助かってしまったのだろうか?どうしよう…!!
僕がぐるぐると混乱していると真っ白なカーテンが勢い良く開かれた。そこにいたのは


「ご、えんじくん…?」
「変な声が聞こえたと思ったら…起きたのか」

先程までの不機嫌はどこへやら。優しそうな顔をした豪炎寺君が現れた。そして、僕の目の前にあるものを見せた。ふさふさとして長い物体…あ、

「そ、それっ!!」
「ん?あぁ、これか?お前を受け止めるときに一緒に掴んでしまってな…取れたんだ」
「え、ていうことは…豪炎寺君が僕を受け止めてくれたの…?」
「お前、ダイブするなら2階までにしとけ。あと、場所を考えろ」

ごもっともな事を言われ、僕はごめんなさいと謝った。あぁ、また豪炎寺君に迷惑を掛けてしまった。布団を手繰り寄せて口元まで持って行く。

「足が動かなくなったらどうするんだ。打ち所が悪かったら?」
「はい…」
「…正直、さっきからそればかりを想像してしまうんだ。もし、俺が間に合わなかったらって…」
「ごめんなさい…」

二回も謝るなと言って豪炎寺君は自分の額を僕の額にくっつけた。額越しに豪炎寺君の体温が伝わってくる。あったかい。

「…すまなかった」
「え?」
「さっき、教室で…冷たくあたってしまって」
「なんで君が謝るのさ。僕の方に非があるよ…だって、君の気持ちにも気付かずにあんな」
「嫉妬…してただけなんだ。餓鬼っぽいだろう?独占欲の塊がどんどんどんどん俺の中に溜まっていって…対処法がわからなくて、いつの間にか大切なお前を傷つけてた…本当にごめん」

こんな豪炎寺君は初めて見た。僕はここで『そんなに落ち込まないでよー!』って軽く笑い飛ばしながら彼を許すこともできたが、それは逆に彼を傷つけることになると思った。僕はただされるがままに額をくっつけて彼の背中をさすった。

『気にしないで』『大丈夫だよ』『ありがとう』

一撫で一撫で思いを込めながら、僕達はしばらくの間そのままでいた。











「で、結局、尻尾を取ったのが豪炎寺君だから、君が勝ったわけなんですが…」
「尻尾を取らなきゃいけなかったのか」
「え?!なんだと思ってたの?!」
「風丸から企画とお前の状況を聞いただけだったから、普通の鬼ごっこだと…何がもらえるんだ?」

呆れた。殆ど何も知らずに僕を追っかけて来たのか…。いや、そのおかげで僕は助かったのだけれど。彼はきょとんとした顔で僕の言葉を待っている。賞品…賞品はですね…

「ネズミーランドのチケット…」
「……………は?」
「いや、だからネズミーランドのチケット。ペアの」
「………」

やっぱり皆そんなリアクションだよね!そりゃ、高校の文化祭で出すような賞品じゃないもんね!!僕もびっくりだもん!

「夕香ちゃんと行ってくれば?折角だし」
「何故だ?」
「何故って…家族じゃないか、夕香ちゃんは」
「俺は、吹雪と行きたいんだが…」

さらりと言われて僕は頬に熱が集中していくのがわかった。そして、言うことの聞かなくなる顔の筋肉。気持ち悪い顔になる前に僕は布団に顔を埋めた。まぁ、間に合わなかったようで

「クスッ、何にやけてるんだ」
「ううう、うるさい…!!」

反抗しても、くにゅりとつり上がった口元は戻る気配はない。にやにやが止まらない。


「〜〜っ!!う、嬉しいんだよ、ばかぁああ!!!!」




とりあえず、豪炎寺君に飛びついといた。




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