不思議なことって突然起きるものなんだなぁ…



「え?!あれ?!ここどこ?!」
「どこかに飛ばされたらしいな…」
「飛ばされたもなにも…ドア開けたの豪炎寺君じゃないか…」
「いや、まさかドア開けただけで飛ばされるとは思わなくてだな…」
「ばかっ!!」

朝、寝室、布団の中には僕と豪炎寺君、布団の上には見たことある子供が二人…

「……ふぇ?」

自分でもなんとも間抜けな第一声だった。いや、しょうがないよね。寝起きなんだから。豪炎寺君なんて低血圧だからシカト決め込んで寝てるし。とりあえず、この状況が理解できない。何?ドッペルゲンガー?僕、殺されちゃうの?

「あの…」
「うぁ?!何でこんなところに人が?!」

いや、それこっちのセリフなんだけど…

「豪炎寺君どうするのさぁ…君のせいで変なところにタイムジャンプしちゃったみたいだよ…」
「そんなこと言われても…」
「元はと言えば、あのクマのせいだ…。鬼道君みたいな声してるからって安心してついて行ったせいだ…」
「あのさ「何ですか、もう!!」

あれ?!逆ギレされた!!
「…吹雪、ここが人の家ってこと忘れてないか?」
「…はっ!!」
「しかも、寝室」
「…あぅ」
「俺たちのせいで起こしたみたいだし…」
「うぅ…」

申し訳無さそうに小さくなっていく小さい方の子供。未だに豪炎寺君は隣で寝ている。ねぇ、なんで驚きより眠気が勝つのさ。意味がわからない。この状況の意味がわかない。この子供二人もわからない。僕もわからない。あー、ダメだ。完全に混乱している。どうすればいいんだろう?えーと、えーとえー…

「混乱してるみたいだぞ…未来の『お前』」
「みたいだね…僕の方は落ち着いてきたよ」


未来の『お前』っていうことはつまり、目の前にいるこの二人は…




「初めまして、未来の吹雪さん。僕は10年前の貴方、14歳の吹雪士郎です」
「同じく俺は14歳の豪炎寺修也です」


え、




「えぇええええぇぇぇええええええええええええええええええええええっ!!!??」
「…ん、うるさいぞ吹雪」





***




「痛い…殴ることないだろ…」
「君、寝起き悪すぎ。不審者の侵入もスルーして呑気に寝てるし」
「眠いんだからしょうがないだろ」
「ばかっ!!」

彼の額にデコピンして布団を剥いだ。豪炎寺君はしぶしぶとベッドから降りてタンスから服を取り出す。あれ?この二人のことスルーなの?

「君の10年後ってあんな風になるんだね…。ま、寝起きの悪さは相変わらずだけど」
「…まるで羞恥プレイだな」

まじまじと観察するように豪炎寺君(大)の着替えを眺める二人…。さて、そろそろ色々聞かないとね…

「えっと、君たちはどうしてこの時代に来たのかな?過去の僕達って本当に?」
「えーと、その…なんと言いますか…」

もごもごと言いずらそうにする14歳の僕。スッと彼の代わり前に出たのが14歳の豪炎寺君だ。おおっ、頼れるお兄さん。しっかりしてるなぁ。

「俺達はあなた達のオーラを貰いに来たんです」
「…?」
「未来の自分の力を貰い、パワーアップする…それが俺達をこの時代に連れてきたワンダバ言ったことです」
「わん…?…??」


うーん、わからないなぁ…


「ワンダバの奴、過去の俺達までスカウトしたのか…」
「はい、突然『一緒に戦ってくれ』なんて言われて」
「FFI真っ盛りなのにねー、いい迷惑だよ。でも、サッカーが危ないんなら話は別だけど」
「今の時代、強力なサッカープレイヤーは『化身』というものを使うと聞きました。でも、俺達はそれを出現させることもできなければ時間もありません。そこで提案されたのが…」
「ミキシマックスか…」


みきしまっくす…?
なんか、聞き覚えのない単語ばかり飛び交うなぁ…僕、置いてけぼりだ

「豪炎寺さん、吹雪さん…どうか俺達に力を貸してください!!」
「それなら喜んで…と言いたいが、ワンダバはどうした?あいつのミキシガンがないとミキシマックスできないだろう?」
「はぁ…それが…」
「豪炎寺君がタイムトラベル中にキャラバンのドア開けちゃって僕達とはぐれたんです」
「何それ傑作」
「ですよね(笑)」

イエーイと僕達、吹雪コンビはハイタッチをした。豪炎寺コンビはなんとも言えない微妙な顔をしていた。

「とりあえず、ワンダバが合流するまでゆっくりしていけ。エルドラドの目が雷門に向いてる今、ここは安全だろう」
「ありがとうございます」






***







「とりあえず、雷門に連絡してみるか」
「ねぇ、豪炎寺君。エルドラドってそんなに強いの?あと、豪炎寺君が最近いろいろ飛び回ってるのと何か関係あるの?」

携帯をいじりながら豪炎寺君は微笑むだけだった。僕を関わらせたくないのか…優しいんだか、お人好しなんだか…

「もしもし、豪炎寺ですが鬼道は…え、いない?じゃあ、サッカー部のキャプテンの松風…もですか。そうですか。じゃあ、サッカー部の部員誰でもいいので代わってくれませんか?…はい、ありがとうございます」

鬼道君もいないのかぁ…

「あの、」
「ん?なんだい?吹雪君」
「ここって北海道ですよね?その、豪炎寺君と…暮らしてるんですか?」
「え?」
「…いや!!深い意味はなくて!!ただ気になっただけで!!ほ、ほら、さっきも一緒に寝てましたし!!どうなのかなーって!!」

顔を真っ赤にしながらぶんぶんと手を振る吹雪君。あー、なるほどね。ふむふむ、気になるよね。大好きな豪炎寺君と上手くやれてるのか…とか。

「見たまんまさ。こういうのって言わない方がいいって言うから言葉にはしないけど、見たまんま。これが今の僕達」
「そう、ですか…よかった…」

ほっとしたように肩を撫で下ろした彼の頭を撫でてみる。あれ?僕ってこんなに頭ふわふわだったっけ?擽ったそうにしている吹雪君の後ろに回り込んで抱き付いてみた。顔を彼の頭に埋めると何とも言えないふわふわ感にハマってしまった。ヤバい、子犬みたい…!!吹雪君は恥ずかしがっているのか「あ、あぅ…うぅ」なんて可愛らしい声を漏らしている。自分で可愛いなんて言うのもあれだけど、可愛いのだ。一応言っておこう、ナルシではない。断じて。

「………」

トイレから帰ってきた豪炎寺君(小)はまた何とも言えぬ顔をしていた。大きさは違えど、同じ顔をした人間がじゃれ合っているのだ。まぁ、そのリアクションが普通かな。

「親子か…」
「?、何が?」
「いや、何でもないです」

素知らぬ顔をしながらソファに座り、少し冷めてしまったお茶を啜りながら「美味い…けど温い…」と余計なことまで呟いた。あ、そういえば…

「君達ってFFIが開かれてるときの僕達何だよね?今、どの辺試合してるの?」
「この前、アメリカ戦が終わったばかりです。次の試合までに戻らなきゃいけないんですが、間に合うかどうか…」

次は…イタリア戦か
そういえば、クロスファイアで先制したんだっけ?

「そうだね、君達が戻らなきゃ歴史が変わってしまう。今の僕達がなくなってしまうかもね」
「大丈夫ですよ」

凛とした声、一瞬この時代の豪炎寺君かと思ってしまった。小さな豪炎寺君はお茶を飲みながら少し大きな瞳で僕を射抜いた。不覚にも少しときめいてしまったが、やっぱり小さくても僕の好きな豪炎寺なんだなと思った。

「歴史を変えられても俺は吹雪を忘れないし、この感情も消させない。だって、俺は吹雪が好きだから」



やっぱり、豪炎寺君はすごいなぁ




「え、わわわっ?!」
「?!ちょっ…」

僕は腕の中にいた吹雪君を豪炎寺君の方に放り投げた。そんなに距離はないから上手くキャッチできたようだが、お茶が少し犠牲になってしまった。

「よっ、バカップル!」
「なっ…!!それ、自分に言ってるんですよ?!」
「そうだよ」





いいじゃないか、バカップルで



僕達の愛は永遠だよ








「待たせたなぁああああぁああああぁああああぁああああ!!!!クラーク・ワンダb「空気読めよ熊ぁああああぁああああぁああああ!!!!」ぎゃああああぁああああぁああああぁああああ!!??」








***





「ひ、酷いっ…」
「悪いなワンダバ。さっきのはお前が悪い」
「うぐぅうっうっうっ…」
「早くミキシマックスしようよ。…さっさとしないと殺すよ…?」
「ひぃいいいいぃっ!!!」

熊殺しの僕ってこんなに怖いんだなぁ、なんて他人事のように吹雪君とワンダバ?っていう熊のぬいぐるみ?のやりとりを見ていた。ていうか、ぬいぐるみなのに動くんだねこの熊。声は生き生きした鬼道君のような声だ。いや、別に鬼道君の声が死んでるって言いたいわけではない。ただ、少し堅苦しいなー、ちょっとカタコトだなーとは思うけど、けども!!死んでる訳ではない!!断じて!!

「豪炎寺君(大)ー、こっち来てー」
「その呼び方やめろ…」

ひょっこりと出て来た豪炎寺君(大)をズルズルと引きずってワンダバの前に集まった。…ミキシマックスって具体的にどうするんだろう?なんて思っているとワンダバが取り出しのは銃だった。え、弾倉がないからレーザービーム的な?え?え?当てるの?僕達に?死ぬ?

「吹雪、大丈夫だ。あれは銃じゃない」
「いやっ、でもあれっ…危なくない?!」
「俺達の力をあの二人に分けるだけの道具だ。害はない」

豪炎寺君はそういうけれど、…やっぱり怖いっ…!!

「いくぞ!!」


どんっと銃から放たれたオレンジ色の光に全身を包まれた。14歳の僕達も同様に光に包まれている。痛くは…ない。不思議と暖かい。そして、身体の中の何かが少しずつ抜けていく感覚…あぁ、これが



「ミキシマックス、コンプリート!!」








「…あれ?!」
「成功か?!…っ!!」
「ありゃ…」

目を開けてみると14歳の僕達は違う姿にへと変化していた。豪炎寺君は薄いクリーム色の髪だったのが、銀髪となり髪の房が一つ垂れていた。そして、目つきも若干つり目気味だが少したれ目っぽくなっている。一方、吹雪君の方は銀髪だった髪がかなり薄いクリーム色に。目つきは若干つり目になり、髪はアツヤのとき同様逆立っている。あれ、まさかこれって…

「豪炎寺君(小)が僕の力を、吹雪君が豪炎寺君(大)の力を受け取ったってこと?」
「ふむぅ、そうなるな。やはりミキシマックスは一気に二人同時にやるものではないな」

一人で納得しているワンダバの脳天に吹雪君の踵がダイレクトにヒットした。勿論、ワンダバはノックアウト。ご愁傷様です。南無南無。

「どうする?やり直すか?」
「いや、もういいです。そこまでお世話になる訳には…それに」
「?、どうした吹雪」
「僕の身体に豪炎寺さんがいると思うと…とっても嬉しいんです」
「そうか、俺も嬉しいよ。お前の力になれることが」
「えへへ」

そっか、ということは…僕の力は豪炎寺(小)の中に…

「ありがとうございます、吹雪さん」
「どういたしまして。僕の力がどの位君の手助けになるのかわからないけど…頑張ってね。応援してるから」
「はい、頑張ります」


こうして、14歳の僕達と頭が凹んだワンダバは東京にへと帰って行った。



「僕達がお互い合体したらあんな風になるんだね…すっごい」
「10年前の吹雪ってあんなに暴力的だったか?」
「さぁ?やんちゃな時期だったんじゃないの?反抗期的な」
「そうか…」
「うん」


こうして、今日の不思議な1日は幕を閉じたのです。




















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