「あ、豪炎寺!」
「あぁ、風丸か…。なんだ?その恰好」

一年の教室がある廊下で風丸と会った。風丸はバーテンダーのような恰好をしていてスーパーの袋を腕に数個ぶら下げていた。多分、昼ご飯だろう。

「うちのクラス、コスプレしてんだよ。これで写真一緒に撮りますよー的な」
「あぁ、なるほど」
「そういえばさ、今吹雪のクラスで変な企画してるの知ってるよな?すのーえんじぇるを捕まえろ?だっけ?」
「…………は?」

聞き覚えがなかった。豪炎寺は数秒思考が止まり、ぽかんとしていた。スノーエンジェル…ってまさか

「絶対吹雪がやってるだろ…」
「あぁ、そのとおり。メイド服着た吹雪が校内中を駆け回ってるそうだ」

やれやれと言いたそうに風丸は肩をすくめた。容姿端麗で足の速い吹雪ならそう簡単には捕まらず、校内を走り回っているのを少なくともサッカー部員は想像するだろう。それが雷門の中で風丸と並ぶ瞬足の持ち主、吹雪士郎なのだ。

「豪炎寺は参加しないのか?」
「…………別に」
「また喧嘩したのか?なんでまた…」
「…………」

なんでわかるんだと言わんばかりの視線を送るが、風丸は誇ったような顔をするだけだった。豪炎寺は溜め息を吐き、踵を翻した。

今冷静に考えれば、吹雪は何も悪くない。悪いのは勝手に妬いた自分だ。そして、相手をしてくれなかったからっていじけたのも自分が悪い。豪炎寺は軽く自己嫌悪に浸ったが、いち早く吹雪に謝ろうと思い、走り出した。













「いやー、助かったよ鬼道君」
「何かと思えば俺をパシらせるなんてな」

裏校舎から屋上に移動した吹雪は途中で偶然に出会った鬼道に食べ物を買ってきてと頼んだのだ。昼前でもずっと走っていたらお腹も減る。買いに行きたくても、あんな人混みの中に入ると絶対に見つかって尻尾を取られてしまう。ということで、暇そうにしていた鬼道に頼むことにしたのだった。

「お前追いかけられてるのに大丈夫なのか?」
「?どういうこと?」
「俺が捕まえないとは限らないだろう?」

吹雪は呑気にフランクフルトを頬張り、うーんと悩んで口を開いた。

「鬼道君、お金持ちだからネズミーランドのペアチケットなんていらないだろうなーって。ていうか、アメリカの方にしか行ってなさそうだもん」
「…だろうと思った」

ふっと笑う鬼道を見て吹雪もにこりと笑った。








「さてと、僕はそろそろ行かなきゃ」
「ん?そうか」
「同じ場所に10分以上留まっちゃ駄目なんだ。変なルール決めないでよね本当…」

吹雪は憂鬱そうに笑いながら最後のたこ焼き一個を頬張った。ゴミを一つの袋に詰め、それを持って階段へと向かう。

「あ、鬼道君ありがとうね。おかげで頑張れそうだよ」
「それはよかった。でも、気をつけろよ。円堂もこの企画に参加してるからな」
「え、キャプテンも?」
「円堂曰わく『ネズミーランドで●ッキー達とサッカーするんだぁあ!!』だそうだ」
「へ、へぇ…」

あの円堂なら可能かもしれない…。吹雪は一瞬納得してしまった。
しかし、ネズミーランドのチケットは自分の物だ、と吹雪は心の中で自分に言い聞かせ屋上を後にした。












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